最新記事

中国経済

中国、恒大集団のデフォルトよりもヤバい電力不足問題とは

2021年9月29日(水)16時21分
中国・玉門市の送電施設

中国各地で工場の一時停止を引き起こしている電力不足は、中国恒大集団の債務問題よりも経済にはるかに大きな脅威となる可能性があり、投資家の間では鉄鋼や建設など電力不足の影響を受けやすい業種を回避する動きが出ている。中国・玉門市の送電施設で2020年9月撮影(2021年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)

中国各地で工場の一時停止を引き起こしている電力不足は、中国恒大集団の債務問題よりも経済にはるかに大きな脅威となる可能性があり、投資家の間では鉄鋼や建設など電力不足の影響を受けやすい業種を回避する動きが出ている。

中国は、石炭の供給不足や排出規制の厳格化、製造業などからの強い需要を背景に電力不足に直面しており、使用量を制限する動きが拡大。電力不足に加え、エネルギー目標や二酸化炭素(CO2)排出削減目標の達成を求める政府の指示を受け、稼働を一時停止する工場が出ている。

こうした中、ゴールドマン・サックスと野村は今年の中国の成長率見通しを下方修正。株式市場では化学品や自動車、海運などが大きく下落する一方、再生可能エネルギー関連株は急上昇している。

投資家はこの問題の潜在的な規模について、今月に不動産株や債券を揺るがした恒大集団の流動性問題による影響をはるかに上回ると考えている。

ウォーター・ウィズダム・アセット・マネジメントのヘッジファンドマネジャー、Yuan Yuwei氏は「恒大問題はしばらく前から明らかになっており、リスクは的を絞った形で軽減されるだろう」と指摘。

一方、電力不足は需給均衡を崩し、消費や実体経済に直接打撃を及ぼすとし、「制御不能な影響になる公算がより大きい」との見方を示した。

過剰反応

恒大問題で打撃を受けた一部の不動産株には、市場の反応が行き過ぎだったとの見方から買いが戻り始めている。

香港上場の中国不動産株は28日に6.4%上昇。上海上場の不動産株も3%高となった。

中国人民銀行(中央銀行)は27日の声明で、恒大に言及しなかったものの、住宅に対する消費者の正当な権利と利益を守ると表明した。

電力消費部門の反発見られず

一方、少なくとも現時点では、電力不足の影響を受けている企業の株式を買い戻す動きはほとんど見られない。状況のさらなる悪化を警戒しているためだ。

銅やアルミなど非鉄金属メーカーで構成する株価指数は今月に入って15%下落。鉄鋼大手も急落しており、宝山鋼鉄と鞍鋼はいずれも9月中旬に付けた直近高値から20%超下げている。

問題は広範囲に及ぶ。8月中旬以降、製造業の中心地である広東省、浙江省、江蘇省を含む20の省で計画停電が実施され、企業の収益を圧迫している。

モルガン・スタンレーのアナリストは27日のリポートで、停電や電力供給制限で鉄鋼、アルミ、セメントの生産やインフラ建設に直ちに影響が出ると指摘。その影響は下流に波及し、海運や自動車など、より多くの分野に及ぶ可能性があるとした。

ヘッジファンド、Tongheng InvestmentのYang Tingwu副部長は、中国のエネルギー・CO2排出規制は「短期的に経済全体にとって悪材料」とし、工場数の少ない企業への投資を現在は選好していると語った。

(Samuel Shen、Alun John記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に
・中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリスクを警告
・武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中