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デジタル人民元が「ビットコインを潰す」は誤解...むしろ仮想通貨を救う可能性も

2021年5月26日(水)19時50分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)

ただ、両者には決定的な違いがあります。ステーブルコインは、ビットコインなど仮想通貨と同様に世界中の全てのコンピューター(ノード)が参加できるパブリックブロックチェーン上で発行されています。つまり、CBDCとは異なり、ステーブルコインが対象とする経済圏には制限がありません。実際ステーブルコインは国際送金ですでに活発に利用されています。

また、政府による資本統制を回避する目的で使われるケースもあります。2020年8月、国外への年間送金額が1人あたり5万ドルに制限されている中国では、仮想通貨を使った500億ドル相当の資本逃避があり、とりわけ米ドル連動のステーブルコインであるテザー(USDT)が重宝されたと報告されています。

上記のようにCBDCと仮想通貨は全く異なる目的を持っています。このため、CBDCが普及したとしても仮想通貨がなくなるのではなく、両者は共存することになるとみています。むしろ、CBDCによって一般人がデジタル版のマネー全般に対する抵抗感をなくすことになり、間接的に仮想通貨のエコシステムに恩恵をもたらすかもしれません。

プライバシーの保護やクロスボーダー送金、資本統制からの回避、そしてインフレ対策に対する需要がなくならない限り、分散型の仮想通貨であるビットコインやステーブルコインなどの魅力が失われることはないでしょう。

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