最新記事

中国経済

依然回復鈍い中国の消費 低所得層「コロナ節約志向」顕著に

2020年10月1日(木)18時19分

中国では新型コロナウイルスの感染がほぼ抑制されてから何カ月も経過し、消費者はゆっくりと財布のひもを緩め始めている。北京の百貨店前で6月撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

中国では新型コロナウイルスの感染がほぼ抑制されてから何カ月も経過し、消費者はゆっくりと財布のひもを緩め始めている。だが、ロックダウンのつらい日々を過ごした多くの低所得世帯は、なお精神的なショックが残り、節約志向をやめようとしていない。

中国の今年第1・四半期は、1992年の四半期ベースによる統計開始以来、初のマイナス成長を記録した。その後の中国経済の回復ぶりは、他の多くの国よりもかなり先行しているとはいえ、まだ全面的に上向いているわけではない。特に消費の弱さは、習近平国家主席が推進する内需主導型の「双循環」モデル達成の足を引っ張る恐れもある。

実際、製造業はロックダウンに伴う落ち込みから比較的素早く立ち直った半面、消費者信頼感の改善は緩やかなペースにとどまっている。小売売上高が前年比でプラスに戻ったのは8月になってから(0.5%増)で、1─8月の前年同期比は8.6%減とさえない。

また、イタリアの高級ブランド・プラダのバッグなど一部ぜいたく品の支出は「コロナ危機」を迅速に乗り切ったが、日々の生活に欠かせないモノやサービス消費の回復は鈍い。アナリストによると、これは低所得世帯が特に慎重な態度を維持していることが主な理由だ。

河南省新郷市の自営業の内装職人でロックダウンの4カ月間仕事ができなかったというZhou Ranさんは「我が家は貯蓄で生活しているが状況は厳しい。本当に必要な物しか買わないようにしていた」と語る。

1─8月の小売売上高の内訳を見ると、衣料品・靴は依然として15%減、ガソリンやその他石油製品は17.3%減で、食品・飲料は26%を超えるマイナスだった。

資産格差拡大

中国の消費者心理がどれぐらいのスピードで改善しているかを探る上で、アナリストは10月1日の国慶節から同8日までの大型連休における小売売上高に注目するだろう。

ただ、5月に再び働き始めたZhouさんは、内装仕事の依頼がなかなかない。「多くの人が現金を手元に置こうとして、住宅改装は先送りされている。今年は誰にとっても苦しい」と打ち明け、自分がお金を使うどころではない様子だ。Zhouさんの妻は3人の子供の面倒を見なければならず、現在は収入はない。

アリババ傘下の金融会社・アントの調査部門と中国の西南財経大学が共同で公表した四半期リポートでは、コロナ流行に対する低所得層の脆弱性が浮き彫りになった。年収10万元(1万4800ドル)未満の世帯のほとんどは、第1・四半期と第2・四半期に資産が減少した一方、年収30万元超の世帯は資産増加が続いたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中