最新記事

中国経済

依然回復鈍い中国の消費 低所得層「コロナ節約志向」顕著に

2020年10月1日(木)18時19分

ガベカル・ドラゴノミクスのアナリスト、Wei He氏は「所得が比較的高い世帯は、恐らく貯蓄を増やした。なぜならロックダウン中は消費の縮小を強制されたからで、今は支出を拡大する態勢にある」と指摘。家計の正常化に「より長い道のり」をたどることになるのが低所得世帯だと説明した。

京東商城(JDドット・コム)のデータからは、6月に中小の都市や低所得層の消費の伸びが、主要都市と高所得層に比べて弱かったことが分かった。同社のフィンテック部門JDディジッツのチーフエコノミスト、Shen Jianguang氏は、これは普段とは逆の動きだと指摘する。多くの低所得労働者を雇っている中小企業が、コロナの影響をより大きく受けたからではないかというのが同氏の見方だ。

低所得層の苦境が中国の消費に及ぼす打撃は、相当大きくなる可能性がある。李克強首相は5月の演説で、月収が1000元程度しかない労働者は6億人前後存在すると明らかにしていた。6億人といえば全人口の4割を超える。

このため中央政府は、過去数カ月で雇用安定と家計支援に向けた幾つかの政策を打ち出し、例えば地方政府や企業は数十億元分の買い物券を配布している。

国内市場に軸足

もちろん世界全体で考えれば、中国の消費回復は不均等であるとはいえ、明るい部分であるのは確かだ。他の主要国は感染第2波と格闘中で、再び経済活動を制限する動きも出てきている。

これまで輸出に依存してきた中国の幅広いセクターは、外需の冷え込みを背景に、政府の熱烈な後押しを受けて国内市場に軸足を移した。

製造業のサプライヤーが直接、国内消費者に製品を販売するのを手助けするアリババのアプリは、3月の配信開始以降、120万社がサインアップしている。アリババの広報担当者は、その半分近くが元来は輸出専門企業だったと説明した。

江蘇省のある歯ブラシメーカーの幹部Tu Xinye氏の話では、今や受注総数の4割を国内が占め、以前の10%から急増した。それに伴って売上高もコロナ前の9割に回復したという。

だが、同氏は規模がより大きく、ライバルが乏しい「ブルーオーシャン」だった輸出市場と異なり、国内は競争がし烈だと述べ、新たな課題が浮上してきたとこぼした。

(Sophie Yu記者、Gabriel Crossley記者、Yawen Chen記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、約4年半ぶり大幅増 季調要因の

ビジネス

米国株式市場・午前=ナスダック一時1週間ぶり安値、

ワールド

プーチン氏、マドゥロ政権に支持表明 経済協力も協議

ワールド

米印首脳が電話会談、二国間関係や国際情勢など協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 4
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 5
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 6
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 7
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 8
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中