最新記事

アメリカ経済

米株押し上げる「コロナワクチン期待」 治験最終段階で楽観論は正念場へ

2020年9月25日(金)16時41分

今年の米株式市場では、新型コロナウイルスのパンデミックがワクチンの開発で終息に向かうとの楽観的な見方が、持ち直しの主な要因となってきた。写真はニューヨーク証券取引所で21日撮影(2020年 ロイター/Andrew Kelly )

今年の米株式市場では、新型コロナウイルスのパンデミックがワクチンの開発で終息に向かうとの楽観的な見方が、持ち直しの主な要因となってきた。しかし、開発中のワクチンは効果を確認する重要な試験を控えており、楽観論は今後数週間が正念場となりそうだ。

UBSによると、米株式市場における5月以来の上昇分の約40%が、新型コロナワクチン開発への期待による部分だった。

世界中で進むワクチン開発の取り組みはヤマ場を迎えつつあり、ファイザーやモデルナは、早ければ10月か11月に臨床試験(治験)の最終データがまとまる見込み。米株式市場はこのところ、追加経済対策の遅れや米大統領選を巡る先行き不透明感などへの懸念から不安定になっており、ワクチンの臨床試験結果が失望を誘う内容なら、さらに動揺が大きくなりかねない。

グリーンウッド・キャピタルの最高投資責任者(CIO)、ウォルター・トッド氏は「ワクチンは効果を持つという前提に立っている。だから、これに反する材料はどんなものでも、市場にとってリスクになるだろう」と述べた。

ワクチンはいくつも開発作業が進められているため、どこか1つの開発が頓挫しても市場への打撃は小さくて済みそうだ。世界保健機関(WHO)によると、現在臨床試験が行われているワクチンは世界全体では30件余りで、このうち6件程度が最終試験の段階にある。

BNYメロン・インベストメント・マネジメントの市場戦略部門のディレクター、リズ・ヤング氏は「壁にたくさんのスパゲッティを投げ付けて、1本でも引っかかればいいという感じで成功を目指している」と話した。

アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発しているワクチンが、治験参加者に副作用が表れていったん臨床試験を停止したにもかかわらず、株式市場の反応が全体的に鈍かったのはこのためだろう。このワクチンは英国、ブラジル、南アフリカで臨床試験を再開したが、米国では止まったままだ。

ワクチンの普及時期については、以前より悲観的な予想も出ている。公開情報に基づいてワクチンの普及時期を予想しているグッド・ジャッジメントによると、来年3月末までに米国でワクチンが幅広く供給される確率は足元で54%となっており、7月初旬の20%弱から上がったが、9月初旬の70%強からは下がった。

ファイザーとモデルナはデータの初期的な分析に基づき、10月か11月に臨床試験の当初結果を公表する可能性があり、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、ノババックスなどがこれに続きそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中