最新記事

自動車

EVで世界トップに上り詰めたテスラ、新たな電池戦略 試されるイーロン・マスク流「吸収」の極意

2020年9月21日(月)11時50分

米電気自動車(EV)メーカー、テスラを16年間でほぼ無名の状態から世界最大の時価総額を持つ自動車会社へと大成長させたイーロン・マスク最高経営責任者は、革新者であり、既成概念を打破する人物だともてはやされている。写真は7月、モスクワを走るテスラのモデルX(2020年 ロイター/Evgenia Novozhenina)

米電気自動車(EV)メーカー、テスラを16年間でほぼ無名の状態から世界最大の時価総額を持つ自動車会社へと大成長させたイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、革新者であり、既成概念を打破する人物だともてはやされている。

しかしマスク氏の行動をたどってみると、むしろ「ファーストラーナー(知識や技術の獲得が早い人物)」という側面が強いことが分かる。テスラに欠けている技術を持つさまざまな企業と提携し、そうした企業の選り抜きの人材を引き抜いた上で、よりリスクを嫌うパートナーたちが超えられなかった限界を突破してきたのだ。

現在、マスク氏をはじめとするテスラ首脳陣は、22日に開く「バッテリーデー」で、サプライヤーにあまり頼らない、より「自給自足」的な企業になるための新たな取り組みを発表する準備を進めている。

低価格で長持ちする新型バッテリー

テスラが目指しているのは、EVのコストを下げてガソリン車との競争力を高められるようにする、低価格で長持ちするバッテリーの生産だ。マスク氏はこの面で、22日に大きな技術的進歩を明らかにすると何カ月も前からほのめかしてきた。

新しいバッテリーセルの設計や製造過程などが確立できれば、テスラはバッテリー生産で長年提携してきたパナソニック<6752.T>への依存を減らすことができる、と事情に詳しい関係者は話す。

テスラの元役員の1人は「イーロン(マスク氏)は事業のどんな部分も他者に依存するのが嫌いだ。そして良くも悪くも、彼は自分の方がうまく、迅速かつ安価にできると思っている」と明かした。

パナソニックや韓国のLG化学<051910.KS>、中国のCATL(寧徳時代新能源科技)<300750.SZ>と結んでいるバッテリー生産の提携関係を、テスラは今後も継続するとみられている。

しかし同時に、EV用バッテリーパックの基本部品であるバッテリーセルの生産を自社で管理する態勢、つまり高度に自動化された2つの工場(1つはベルリン近郊に建設中、もう1つはカリフォルニア州フリーモント)に製造拠点を置く方向に動きつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イスラエル首相をホワイトハウスに招待 

ワールド

トランプ氏のMRI検査は「予防的」、心血管系は良好

ビジネス

米ISM製造業景気指数、11月は48.2に低下 9

ワールド

ウクライナ、和平案巡り欧州と協議 ゼレンスキー氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 5
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中