最新記事

世界経済

中国頼みの世界の製造業、新型ウイルスで物流ストップしお手上げ状態

2020年2月25日(火)12時40分

2月20日、新型コロナウイルスの感染が拡大する中国は、春節(旧正月)が終わっても「世界の工場」としての役割をなかなか再開できない。写真は19日、浙江省湖州市の靴下工場で働く従業員。提供写真(2020年 ロイター/China Daily)

高速道路は封鎖され、労働者は職場に行けず、製品供給は細り続けており、貨物船や航空機による輸送も機能不全――。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中国は、春節(旧正月)が終わっても「世界の工場」としての役割をなかなか再開できない。足かせとなっているのは感染防止のための人の移動制限や隔離措置で、多くの地域では今もなお継続されている。

典型的なケースを見てみよう。製造業の一大拠点である広東省東莞市で加湿器などを製造する工場は先週、全従業員40人の半分しか出勤せず、重要な職務を担う人を欠いたため苦戦を強いられた。工場経営者のルノー・アンジョラン氏は「品質検査担当者が誰もいなかった。1人は湖北省で身動きできず、別の1人は交通機関が止まったままの地域にいる」と話した。

アンジョラン氏は、東莞市にある他の複数のメーカーも、出勤者が通常の半数という状態で操業しており、一部では半分に満たないところもあると述べた。

これらの製造業にとっては、既に米中貿易戦争で受けた傷口に塩をすり込まれているのに等しい。また多くが労働力を農村部から集めているだけに、それぞれの省や都市、自治体がめいめいに打ち出した移動制限に対処するのは難しくなっている。

米アップルは17日、数週間前に示したばかりの1-3月売上高見通しが達成できないと表明。現代自動車や日産自動車は、一部の生産を停止した。中国国内だけでなく、部品が入手できないとの理由で自国工場も停止の対象になった。

特に東南アジアが拠点で、中国からの製品供給に依存するような中小企業では、厳しい決断を迫られつつある。シリコンメタル(金属ケイ素)を製造する台湾企業の錩泰材料は1月末にタイの工場を突然閉鎖し、約350人をレイオフした。工場があるカンチャナブリー県の幹部は「原材料が中国から送られてこないので、生産できなくなった」と述べた。

アパレルブランド「ZARA」を展開するインディテックスなどを顧客とするシノプラウド・カンボジア・ガーメンツはロイターに、素材の繊維の在庫が底を突きかけているため、減産する可能性があると話した。

上海の米商業会議所が米企業109社を対象に行った調査では、半数近くがサプライチェーンの面で既に影響を受けていると回答し、残りの大半も3月中には影響が出てくるとの見方を示した。

モルガン・スタンレーのエコノミストチームは、新型ウイルス問題によって世界経済は第1・四半期の成長率が0.5%ポイント押し下げられ、中国の国内総生産(GDP)成長率も前期の6%から4.2%まで減速するとの試算を明らかにした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中