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韓国、キャッシュレス完了した国が進める「コインレス社会」

コインレス目指すのはコスト削減

では、一体なぜ韓国銀行はこの"硬貨の無い社会(COINLESS SOCIETY)"を推進するに至ったのだろうか。大きな理由は硬貨自体にあった。硬貨の製造及び、管理と流通には毎年600億ウォン(約60億円)もの資金が使われているという。特に、現在韓国の硬貨で一番低い単位10ウォン硬貨は製造に1枚当たり20ウォン掛かっており、作れば作るほど赤字の状態だ。

さらに、2016年韓国銀行が行ったアンケートでは、46.9%の韓国人が「細かいおつりを貰っても使わない」と回答し、62.7%もの人が「硬貨を持ち歩くのがめんどくさい」と答えた。日本のように、500円硬貨まである日本とは違い、韓国は日本の1円(10ウォン)/10円(100ウォン)/50円(500ウォン)の3種類までが硬貨で、約100円の価値がある1000ウォンからが紙幣というのも、持ち歩かない理由の一つだろう。

硬貨のない社会、まだ実現しない理由は

2017年に発表された「2020年までに実現させる "硬貨の無い社会(COINLESS SOCIETY)"」だったが、今年がその2020年だ。その後どうなったのだろうか。韓国銀行の発表では、執行された2017年には1日平均3万3870件ものサービスが利用されていたという。2019年には実施2期としてさらに力を入れていたが、2020年の現在も韓国には小銭は存在している。

普及しなかった大きな理由は、おつりがポイント化される部分にあった。ポイントカードに入金するため、その店舗のポイントカードを作る必要があるのだが、わざわざカードを作ることを億劫に感じていたようだ。また、マーケティングがうまくいっておらず、硬貨のおつりを貰わなくてよいという便利さがあまり知れ渡っていなかったのも理由の一つと言えるだろう。

韓国銀行は、2017年発表の際に「おつり(1回につき1万ウォン以下/1日10万ウォン以下)を消費者の登録した銀行口座に直接振り込むシステムも開始したい」としているが、これは2020年2月現在いまだ実現に至っていない。韓国銀行は昨年の実施2期で、2020年6月末までには実現させるとしているが4か月後に実施される様子はないままだ。

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