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新型コロナウイルス株式市場にも新型ウイルスの脅威 リスクオフで不動産株に買い

東京株式市場は中国で発生した新型肺炎の感染拡大でリスクオフムードが強まるなか、不動産株が堅調に推移した。写真は東京都内の証券会社。1月8日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
27日の東京株式市場は、中国で発生した新型肺炎の感染拡大でリスクオフムードが強まるなか、不動産株が堅調に推移した。不透明な外部環境のもとで代表的な内需関連株が選好されやすい地合いだったほか、遅れ気味だった株主価値向上への取り組みが業界に広がるとの思惑も支援材料となった。
中国の武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎は感染が広がり、最新の報告では、患者数が中国国内で2744人、死者は80人に達している。27日の日経平均株価は朝方から売りが先行、下げ幅は一時500円を超え、最終的には2.03%安で取引を終えた。
新型肺炎については、2002年から03年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)との比較で感染力や致死率は低いとの見方もあるものの、本当のところはまだ解明されていない。「人の移動が止まり、経済活動がまひするとなると、その影響は計り知れない。しばらくは神経質な展開が続く」(岡三アセットマネジメントのシニアストラテジスト、前野達志氏)との声が出ていた。
そんな中、健闘したのが不動産株<.IRLTY.T>。27日は業種別で唯一上昇し、前営業日比1.66%高で取引を終えた。市場からは「世界経済の先行きに対する警戒から外需系の景気敏感株には手を出しづらく、旅行客需要の減少懸念から内需系でもインバウンド関連は買いづらい。相対的に不動産株は持ちやすい」(三井住友トラスト・アセットマネジメントのシニアストラテジスト、上野裕之氏)という。
三菱地所の長期計画を評価
個別では、三菱地所<8802.T>が24日に発表した長期経営計画で株主価値向上を戦略の一つに掲げたことも引き続き評価されているという。
同計画によると、2030年の財務指標について、ROA(総資産利益率)5%(20年3月期予想は3.9%)、ROE(自己資本利益率)10%(同7.8%)、EPS(1株当たり純利益)200円(同100.20円)を目標とする。株主還元として配当性向30%程度、資本政策の一環としての自己株式の取得にも言及した。
SMBC日興証券は24日付リポートで「ROE10%の水準は決して容易な目標ではない」としつつも、「物件売却などにより資産回転率を高め、資産運用などノンアセット事業を成長させることに加え、自社株買いなど株主還元も充実させることにより、ROE、EPSを持続的に高める施策が積極的に実施される」と期待を示した。
このほか市場からは「これまで大手不動産は利益を出すことに必ずしも積極的ではなかったものの、業界トップの三菱地所が数値目標を掲げたことで、競合他社も追随せざるを得ないだろう。業界全体に株主価値向上の動きが広がる可能性もある」(国内証券)との声も出ていた。
(編集:石田仁志)
[東京 27日 ロイター]


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