最新記事

日本経済

展望2020:通信業界 変わるか日本の携帯キャリア、楽天参入に各社警戒

2020年1月5日(日)11時31分

通信業界では2020年を前に、楽天が春にも自社でインフラをもつMNO(携帯電話事業者)としてのサービスを本格的に開始することへの警戒感がくすぶっている。写真は2019年5月4日、皇居で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

通信業界では2020年を前に、楽天が春にも自社でインフラをもつMNO(携帯電話事業者)としてのサービスを本格的に開始することへの警戒感がくすぶっている。格安料金とともに、電子商取引(EC)などの巨大な経済圏との組み合わせでユーザーの囲い込みを進めるとみられるためだ。一方、来春から商用化が始まる5G(第5世代移動通信)の一般消費者への普及はまだ先で、まず産業分野が先行しそうだ。

「経済圏」で誘引、料金にも警戒感

50ギガバイトで900円ーー。楽天のものとされる「料金プラン」が2019年11月、SNSなどで拡散した。業界平均を大きく下回る料金に、ネットでは一時騒然となった。すぐさま楽天が、ダミーの数字を入れたホームページの画面を誤って流出したと釈明し「幻の料金プラン」となったが、楽天の三木谷浩史会長兼社長が「他社が真似できない」料金プランを打ち出すと表明しているだけに、業界関係者の警戒感はくすぶる。

楽天は電子商取引(EC)の商店街や銀行・証券、旅行代理店などとポイントサービスを連携した巨大な「経済圏」を形成している。三木谷氏の示唆するような格安プランに加え、携帯電話でもポイント還元などの施策を打ち出せば、楽天経済圏のヘビーユーザーへの訴求効果は高い。

この楽天経済圏に対抗し得るのはソフトバンク<9434.T>とみられている。傘下のヤフーがECに力を入れるほか、ZOZOの買収やLINEとの統合を矢継ぎ早に打ち出すなど、経済圏を急速に拡大させている。NTTドコモ<9437.T>やKDDI<9433.T>も異業種との提携を進めており、同様の経済圏拡大に向けた動きは続きそうだ。

当初は2回線目需要ねらいとの見方も

楽天は基地局の不足を補うため、東京23区、名古屋市、大阪市を除いたエリアや地下鉄、地下街、屋内施設などでKDDIのネットワークを利用するローミング契約を結んでいる。利用料金は1ギガバイトあたり約500円で、楽天のユーザーがローミングする機会が増えればその分、KDDIの収益に貢献する一方、楽天としてはコストがかさむ。

このため、自社の基地局が少ないスタート時点から無理にユーザー拡大を図るのは必ずしも得策とは言えなさそうだ。SBI証券の森行眞司シニアアナリストは「緩やかな立ち上がりになる」と見ている。ローミング料金を考えれば、しばらくは3キャリアに対抗できるようなヘビーユーザー向けのプランも用意しにくく、当面の競合相手は日本通信<9424.T>やIIJ<3774.T>といったMVNO事業者になりそうだという。森行氏は、楽天のサービスは現時点では品質面で課題があるとみられているとし「当初は2回線目の需要を取り込み、品質の改善に合わせて1回線目としての需要を取り込む戦略もあり得る」とみている。

5G、目先は「ローカル」活用先行か

今春にも5Gの商用化が始まる。各キャリアとも、基地局の設置を急いでいるが、十分なエリアをカバーするには時間がかかる。目先は、エリア限定の「ローカル5G」による工場の自動制御といった産業面での活用が先行しそうだ。

一般ユーザー向けサービスでは、端末価格が課題となる。将来的には数量効果で安くなる見込みだが、当面の5Gサービスは高級端末に限定された機能になり、 当面は一部のヘビーユーザーの利用に限られそうだ。 各社の計画や5G関連の減税策を踏まえると、一般ユーザーの利用拡大に弾みがつき始めるのは「人口カバレッジが50%程度となる2021年度の夏あたりからではないか」(SBI証券の森行氏)という。

それでも渋谷のスクランブル交差点など通信の混雑する場所では、一部のヘビーユーザーの通信トラフィックが5Gに流れることで、現行の4G(LTE)通信の混雑を緩和する効果が期待される。それにより、動画など通信量の大きいコンテンツの利用が4Gユーザーに浸透すれば、5Gの本格普及の足がかりにもなり得る。

(編集:内田慎一)

平田紀之

[東京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、2025年第4四半期速報値は1.4%増に

ビジネス

米コアPCE価格指数、12月は前月比0.4%上昇 

ビジネス

トランプ政権、石炭火力発電所の有害大気汚染物質規制

ワールド

ラガルドECB総裁、任期満了が「基本方針」 WSJ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではな…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 7
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中