最新記事

年末商戦

ネット通販増加で複雑化 マーケティング担当を悩ませる小売各社「真の実力」

2019年12月27日(金)14時27分

ネット販売の増加で消費者の行動が大きく変化したため、市場調査会社NPDグループで働くコーエン氏をはじめ、小売業界のアナリストは20年前とはきわめて異なる調査手法を強いられている。ケンタッキー州で24日撮影(2019年 ロイター/Bryan Woolston)

クリスマス商戦の時期に同じ店舗を見て回るのが、マーシャル・コーエン氏の30年来の恒例行事だ。

小売業界のチーフアドバイザーという肩書きを持つコーエン氏は、セール品を物色するわけでもなく、友人や家族のために素敵なプレゼントを探すこともない。オンラインショッピングの波が大きなうねりを伴って小売業界に押し寄せる中、店に足を運ぶ人々の購買動向を探るのが彼の目的だ。

消費者の行動や嗜好が大きく変化したため、市場調査会社NPDグループで働くコーエン氏をはじめ、小売業界のアナリストは、20年前とはきわめて異なる調査手法を強いられている。

「調査の方法論、いや、単なる店舗観察であっても、これまでのやり方を今の世の中で繰り返そうとすれば問題が起きるだろう」と、コーエン氏は言う。来店者数に注目したり、駐車場を利用する車の台数をカウントしたりするだけでは、もはや十分ではない」

コーエン氏ら小売業界のアナリストは、調査手法を改善していく必要がある。彼らの知見は、投資家や小売企業といった顧客が利用し、マーケティングに影響を与え、株価を動かし、投資判断の材料になるからだ。

オンライン上で支出を増やす消費者は米国内で記録的な数に達しており、小売各社がクリスマス商戦と年末年始の値引き競争を激化させているのと相まって、アナリストには新たな発想が求められている。

例えば、単に買い物客に「なぜ何も買わずにこの店舗を離れるのか」と尋ねるだけでなく、クリスマス向けの買い物を7月の「プライム・デー」から始めたかどうかを質問し、オンラインショッピング最大手アマゾン・ドット・コムの影響力を探ろうとしている。「プライム・デー」は、いまや感謝祭の週末「ブラック・フライデー」と並び、小売業界の一大イベントだ。

店舗面積当たりの売上高の計算に代わるのは、小売企業の実店舗やオンラインショップで、インスタグラムで誕生した高級プライベートファッションブランドがいくつ展開されているかというデータである

さらに、単に店から出てくる買い物客がいくつの包みを手にしているかを数えるだけではなく、ミレニアル世代や「Zジェネレーション」といった若い世代がどれくらい店舗を訪れ、商品を購入しているかをカウントするようになっている。

コンシューマー・グロース・パートナーズのクレイグ・ジョンソン氏は、来店者数や平均販売価格、平均客単価といった伝統的な指標も、依然として店舗の状況を知る上で非常に参考になることが多いと話す。

しかし、ネット通販や、オンラインで買って店舗で引き取るといったサービスの増加により、顧客転換率(来店者に占める商品購入者の比率を示す伝統的な指標)の推計が困難になっている可能性があるという。

ショッパートラックのグローバル・リテール・コンサルティング部門シニアディレクター、ブライアン・フィールド氏は、小売企業が発表する来店者数が、実店舗で商品を購入する客のものか、オンラインで注文した商品を受け取りに来た客のものかを判断するのは特に難しいと指摘する。「小売企業がオンラインでの売上と実店舗での売り上げを合わせて発表している、というのとほぼ同義だ」とフィールド氏は言う。

「実際のところ、顧客が商品を購入するまでの道のりが変化したということに尽きる。実店舗であれオンラインであれ、買い物のプロセスはどこからでも始まり、どこででも終る」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

政府関係者が話した事実はない=為替介入実施報道で神

ワールド

香港民主派デモ曲、裁判所が政府の全面禁止申請認める

ビジネス

英アーム、通期売上高見通しが予想下回る 株価急落

ワールド

ガザ休戦案、イスラエルにこれ以上譲歩せずとハマス 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中