最新記事

米中通商協議

トランプ、対中通商合意「大統領選後まで待つかも」 中国へ圧力強める姿勢

2019年12月4日(水)09時04分

トランプ米大統領は、中国との通商交渉合意に期限はないとし、来年11月の大統領選挙後まで待った方が良いかもしれないと述べた(2019年 ロイター/KEVIN LAMARQUE)

トランプ米大統領は、中国との通商交渉合意に期限はないとし、来年11月の大統領選挙後まで待った方が良いかもしれないと述べた。米中通商問題の早期解決に向けた期待が後退したことで、オフショア市場で人民元相場が10月以来の安値を付けた。

北大西洋条約機構(NATO)首脳会議のためロンドンを訪れている大統領は記者団に対し、「期限はない。ある意味で選挙後まで待った方が良いのではとも思う。彼らは現段階での合意を望んでいる。うまく合意できるかどうか、いずれ分かる」と述べた。

その上で「中国との通商合意は、私がディール(取引)を行いたいか、行いたくないかの1点にかかっている。現在、中国とは極めてうまくやっており、ほんの少しペンを動かし署名するだけで、一段とうまくやることができる」とし、「中国は代償を払っている。中国は過去57年で最悪の状態になっている。どうなるか様子を見てみよう」と述べた。

実際、中国では米国との貿易戦争の影響で製造業が低迷し、中国国家統計局が10月に発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)は前年比6.0%増と、伸び率は1992年の四半期統計開始以来の最低水準となった。

トランプ氏は9月にも、来年の選挙前の合意は必要ないとの見解を表明。この日は中国に一段の圧力を掛けた格好となった。

トランプ氏のこの日の発言後に、ロス商務長官はCNBCテレビとのインタビューで、米中通商協議に関して大統領の目標は変わっていないとした上で、トランプ氏は妥結に向けた時間的制約を感じていないという認識を表明。1560億ドル分の中国製品への追加関税発動期限が15日に迫っていることについて、協議が著しく進展するなど発動を見送る実質的な理由がない限り追加関税は予定通り発動されると語ったほか、米中交渉は実務者レベルでは継続する見通しだが高官協議の開催は全くめどが立っていないことも明らかにした。

トランプ氏の発言を受け中国人民元相場が下落。オフショア市場で1ドル=7.0695元と、10月25日以来の安値を付けた。

このほか、株式から安全資産とされる債券に資金が流れ、米株式市場でS&P総合500種<.SPX>が一時1.22%下落したほか、米10年債利回りは約1.7%と、約1カ月ぶりの水準に低下した。

トランプ大統領は2日、ブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに直ちに関税を課すと表明。両国の意図的な通貨切り下げで米農業部門が圧迫されているとの考えから報復措置を打ち出したものとみられる。

このほか米通商代表部(USTR)は同日、フランスのデジタルサービス税が米IT(情報技術)企業を不当に差別しているとして、シャンパン、ハンドバッグ、チーズなどフランスからの24億ドル相当の輸入品に最大100%の追加関税を課す可能性があると明らかにした。

米ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国経済専門家、スコット・ケネディ氏は「こうしたことすべてがトランプ政権の信頼性を損ねている。ただ、どちらの側にも信頼性を巡る問題は存在している」と述べた。

*内容を追加しました。

[ロンドン 3日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191210issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月10日号(12月3日発売)は「仮想通貨ウォーズ」特集。ビットコイン、リブラ、デジタル人民元......三つ巴の覇権争いを制するのは誰か? 仮想通貨バブルの崩壊後その信用力や規制がどう変わったかを探り、経済の未来を決する頂上決戦の行方を占う。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国政府系ファンドCIC、24年純利益は前年比30

ビジネス

独ティッセンクルップ、26年は大幅赤字の見通し 鉄

ビジネス

ドイツ輸出、10月は米・中向け大幅減 対EU増加で

ビジネス

グーグル、AI学習でのコンテンツ利用巡りEUが独禁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中