最新記事

金融

アルゼンチンが債務返済延期を表明 アナリスト「地球上で最もデフォルトの確率が高い国」

2019年9月2日(月)17時23分

アルゼンチン政府が債務の返済期限延長計画を示したことで、投資家は同国が再び本格的なデフォルト(債務不履行)に陥るのではないかと戦々恐々だ。写真は20日、ブエノスアイレスで記者会見に臨むラクンサ財務相(2019年 ロイター/Agustin Marcarian)

アルゼンチン政府が債務の返済期限延長計画を示したことで、投資家は同国が再び本格的なデフォルト(債務不履行)に陥るのではないかと戦々恐々だ。

今月実施された10月の大統領選挙の予備選で、ポピュリズム(大衆迎合主義)に傾く野党候補フェルナンデス元首相が現職マクリ大統領を抑えて首位に立って以来、アルゼンチン資産は急落。中央銀行は外貨準備を費やして通貨ペソの防衛を迫られた。

政府は国内短期債務の多くについて借り換えが不可能になり、ラクンサ財務相は28日、機関投資家が保有する国内法に基づく債券の返済期限延長計画を示すとともに、対外債務と国際通貨基金(IMF)からの借り入れについても返済期限延長の意思を表明した。

この提案は議会の承認を得る必要がある。また返済期限を延長するだけで、元本削減(ヘアカット)は盛り込まれていない。

発展途上市場投資会社テリマーの計算によると、返済期限延長計画の対象となるのは短期債務70億ドル、長期債務500億ドル、IMF融資440億ドル。

アルゼンチンは過去にもデフォルトを起こした経緯がある。直近で最大級だった2001年のデフォルト後、同国は何年間も景気後退と経済危機に苦しみ、ようやく危機から脱したのは15年になってからだった。

投資家は、デフォルトが不可避か、返済期限延長がアルゼンチン経済の回復につながるか、国際法に基づく債券の保有者がどのような打撃を受けるかについて、見方が分かれている。

ドイツ銀行のホンタオ・ジアン氏は、アルゼンチンが直面するのが流動性危機だけであれば返済延期は役立つが、ソルベンシー(返済能力)に問題があるため、計画は機能しそうにないとみる。

ジアン氏は顧客向けノートに「間違いなくアルゼンチンの対外債務はデフォルトになるだろう。今回の発表自体がCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のデフォルト事由に相当するかどうかは定かでないが、この計画が実行されればデフォルトになり、CDSの保証が実行されるだろう」と記した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平交渉が2日目に、ゼレンスキー氏と米特

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶

ワールド

タイ、2月8日に総選挙 選管が発表

ワールド

フィリピン、中国に抗議へ 南シナ海で漁師負傷
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中