最新記事

日本経済

日韓対立で旅行業界に激震 円高も追い打ち、インバウンド需要後退か

2019年8月8日(木)16時59分

今年上期、韓国の観光客は5年ぶり減

大韓航空は、日本との外交関係悪化に伴い需要が減少しているため、釜山─札幌線の運航を9月3日から停止すると発表した。大韓航空系列の格安航空会社(LCC)、ジンエアーも「反日ムードが続き、予約率に影響が出るようであれば、日本路線を調整する可能性も排除できない」(広報担当)としている。

日本政府観光局(JNTO)がまとめたデータによると、2018年の訪日外客数は前年比8.7%増の3119万人。国・地域別では、中国が838万人(全体の約26.8%)で最も多く、韓国が753万人(同24.1%)で続いた。しかし、19年上期(1─6月)の訪日韓国人旅行者数は同3.8%減。2014年以来5年ぶりに上期の減少となった。

足元で進行する円高や世界的な景気減速懸念なども、インバウンド需要で潤ってきたホテル業界にとっては逆風だが、この先、国内的な懸念もある。「10連休」の反動だ。

観光庁が旅行各社からヒアリングしてまとめた国内旅行の総取扱高は4月が前年同月比9.1%増、5月が同2.8%増と、春の10連休の需要を取り込んで全体的に伸びた。6、7月分までは公表されていないものの、梅雨明けの遅れや天候不順などの影響も加わり、全般的に伸び悩むとの懸念が出ている。

国内証券の関係者は「需要の先食いがあったのは間違いなく、夏休みの需要の取り込みには相当頑張らないと厳しいと、ある旅行代理店の首脳から聞いた。国内が冷え込む中、韓国からの訪日観光客が減少すればホテル業界にとって『ダブルパンチ』になりかねない」と指摘する。

9月下旬にラグビーワールドカップが開幕すれば世界中から観客が来日してホテルの稼働率も上昇しそうだが、一過性の要因でもある。日韓関係の対立によって、インバウンド集客の2トップを担う韓国からの来客の低迷が続けば、ホテルをはじめとしたインバウンド関連株の上値を継続的に圧迫する可能性がある。

(杉山健太郎 編集:伊賀大記)

[東京 8日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中貿易協議で大きな進展とベセント長官、12日に詳

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中