最新記事

成長続くインドの高級チョコ市場 農村部の消費拡大で熱き戦い

2019年8月6日(火)12時00分

サティッシュ・Pさんは、インド南部バンガロール近郊の小さな村ハロハリでパン屋を営んでいる。写真はキャドベリーのチョコレート。英マンチェスターで2010年1月撮影(2019年 ロイター/Phil Noble)

サティッシュ・Pさんは、インド南部バンガロール近郊の小さな村ハロハリでパン屋を営んでいる。彼は2年前、米食品大手のモンデリーズ・インターナショナルが製造するチョコレートバー「キャドベリー・シルク」を仕入れることに迷いがあった。

「キャドベリー・シルク」は1本70─170ルピー(110─270円)。サティッシュさんが長年扱ってきた小さなチョコレートはほんの5ルピーで、それに慣れた顧客にとってキャドベリーははいかにも高すぎるように思えた。だが彼は思いきって仕入れを決断。現在、「キャドベリー・シルク」の売上は月間3500ルピーにも達する。

「最近の村の住民は、高級チョコレートを買う余裕がある」と彼は言う。

サティッシュさんをはじめとするハロハリ村の商店主らが気づいたように、インドでのチョコレート消費量は急増している。それが可能になったのは、インド総人口の3分の2以上が暮らす65万カ所の比較的貧しい農村にも、可処分所得の拡大が広がったからだ。

ネット通販ブームと大幅な減税も売上高増大を後押ししていることから、モンデリーズや スイスの食品大手ネスレ、進出がやや遅れた米チョコレート大手ハーシーなど、グローバル規模の製菓企業が、まだ小規模とはいえ急速に拡大しつつあるインド市場への投資を加速している。

インドでの売上高で首位に立つモンデリーズ(本社米イリノイ州)は、ロイターに対し、世界全体での今年の投資額は5年ぶりに1億5000万ドル(約163億円)の増加に転じたが、「その大部分」はインドの農村部向けになると明かした。

モンデリーズは2000年代初め、インドの商店主らにまず冷蔵陳列ケースを無料で提供し、昨年農村地域への流通ルートを拡大した。2018年の時点で5万カ所の農村に商品を供給していたが、今後3年間で約7万5000─10万ヶ所に拡大する計画である。

モンデリーズでは、この目標に向けて冷蔵配送トラックの台数を増やし、インドの小規模小売店を網羅するデータベースを構築。そうした店舗における自社商品の販売状況をモニターしている。

モンデリーズのインド担当マネージング・ディレクターであるディーパク・アイヤーは、「農村地域の消費者は貧しいという誤解がある。皆が貧しいわけではない。富裕な農家もあり、消費階級になりつつある」とロイターに語った。

アイヤー氏によれば、モンデリーズでは最小で人口3000人程度の農村までターゲットにしているという。「最近では、モバイル接続のインターネットで商品を目にして、高級チョコレートを欲しがる家庭もある」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

豪6月失業率は3年半ぶり高水準、8月利下げ観測高ま

ビジネス

アングル:米大手銀トップ、好決算でも慎重 顧客行動

ワールド

WTO、意思決定容易化で停滞打破へ 改革模索

ビジネス

オープンAI、グーグルをクラウドパートナーに追加 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 5
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 6
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 9
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中