最新記事

米中貿易戦争

追加関税は回避するも長期化する米中対立 翻弄される日本企業

2019年7月1日(月)09時00分

大阪で29日に行われた米中首脳会談では、米国による中国から3250億ドル規模の輸入品に対する25%関税の賦課が回避されたものの、両国の対立は長期化しそうだとの見方が専門家から提起されている。写真左からトランプ米大統領、安倍首相、習中国国家主席、28日撮影(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)

大阪で29日に行われた米中首脳会談では、米国による中国から3250億ドル規模の輸入品に対する25%関税の賦課が回避されたものの、両国の対立は長期化しそうだとの見方が専門家から提起されている。その背景に軍事的な優位を支える最先端技術を中核とした知的財産権を巡る争いがあり、簡単に収束しないためだ。米中の間で翻弄される日本企業は、最適なビジネスモデル構築に向け、手探りの展開が続きそうだ。

米中対立、長期化の可能性

29日のトランプ米大統領と習近平中国主席の大阪での米中首脳会談では、当面米国が3250億ドル分の中国からの輸入に25%の関税を賦課することなく、米中通商交渉を再開することで合意。米企業がファーウェイに対し、安全保障上の懸念がない限り、部品供給することを認めると米側が提案した。

しかし、米中間の対立の根本には、貿易収支の不均衡ではなく、軍事的な優位の確立に不可欠なハイテクを中心にした知的財産権を巡るヘゲモニー争いがあるとの見方が、専門家の間では根強い。

「米中の経済対立は、トランプ政権のうちは続くと、覚悟したほうが良い」ー─。デロイトトーマツコンサルティング・パートナーの羽生田慶介氏は、根本的な米中対立は長期化すると指摘する。

背景には、米政権内でロス商務長官やライトハイザー通商代表部代表、ナバロ大統領補佐官(米通商製造政策局長)らの政策方針が「対中強硬」であり、中国の知的財産権保護や企業への補助金の政策が転換されたと確認できるまでは、対中関税政策を緩めない姿勢があるためだ。

このため、従来からの2500億ドル分の関税は、知的財産保護に関する中国の対応に進展がなければ解除は難しいと羽生田氏は予測。

ファーウェイへの部品販売が認められる方向についても「これまで米技術の知的財産保護の目的で先鋭化されてきた論点であり、すぐに全面解除にはならないだろう」とみている。羽生田氏は、これから行われる実務者協議だけでなく、投資や輸出管理に関する法律の施行状況が注目点になると予想する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、ウ和平交渉で立場見直し示唆 トランプ氏

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中