最新記事

日本社会

「働き方改革」では世界に取り残される? 日本の働き方は「時代遅れ」

2018年5月3日(木)13時41分
岡本 祥治(みらいワークス社長)※東洋経済オンラインより転載

聞けば、彼らの会社は日本を含むグローバル展開をしているといい、目下同僚の1人が、現在日本に「出稼ぎ」に行っているという。なぜなら、日本の人材紹介エージェント料はシンガポールの2〜3倍と高く、企業による人材エージェントの利用率も高いから。つまり、人材エージェントとしてのインセンティブも高いため、数年間だけ日本で働いて稼ごう、と考えているというわけだ。自分の能力やニーズに合わせて、働く国を選んでいるのである。

私自身、ヘッドハンティング会社から突然電話をもらったことが何度かあるが、その際に英語しか話せない外国人からの電話を受けたこともあった。日本で働くのにあたって日本語は必須、特に営業職においては余計にそうだと思っていたが、彼らにしてみれば世界標準の英語さえ使えれば、世界で働けると考えているのだろう。

海外で働きたくても働けない人もいる

一方、世界には働きたくても働けない人もいる。パレスチナ自治区を旅した際、現地で出会ったパレスチナ人は、「自分は幸運にも仕事に就けているが、多くのパレスチナ人は仕事の機会に恵まれない。イスラエルでも仕事にありつけず、また海外で働こうとしてもパスポートも持っていないので外に出ることができない」と話していた。パレスチナとイスラエルの政治的対立が続く中、パレスチナ人がイスラエルで仕事を得ることは大変困難で、どうにかして海外に出て働く方法を模索する人は少なくないそうだ。

ひるがえって日本はどうだろうか。近年、若者の「海外離れ」が取りざたされているが、実際海外勤務を嫌がる人が増えている。産業能率大学が2017年に行った調査によると、新卒採用された新入社員のうち海外で働きたくないという人の比率は、2004年に28.7%だったが、2015年には63.7%に上昇。2017年には60.4%と下がったもの、まだ高い水準となっており、ビジネスがグローバル化し続けている状況とは逆行している。

その理由として、「自分の語学力に自信がない」(63.6%)、「生活面で不安」(47.0%)、「海外に魅力を感じない」(26.1%)ことが挙げられている。

一方、同調査における日本企業はグローバル化すべきか、という質問に対しては、79.5%が「進めるべき」と回答し、過去最高となっている。これは、グローバル化は避けて通れないことだと認識しながらも、自分は巻き込まれたくない、というスタンスの若者が多いことを表している。

こうした中でも、海外で働くことを選ぶ若者はもちろんいる。たとえば、ブラジルのアマゾンを旅行しているとき、たまたま一緒になった現地の日本法人で勤めている若者は、自ら手を挙げて赴任してきたとのこと。メーカーに勤めている彼は、現地工場で生産管理や技術移転などを担当しているという。海外で働くことを希望する人が減っているのは残念だが、少なくとも海外勤務を希望する人にはその機会を提供する社会でありたいものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、台湾・南シナ海での衝突回避に同盟国に負担増要請

ビジネス

モルガンSも米利下げ予想、12月に0.25% 据え

ワールド

トランプ氏に「FIFA平和賞」、W杯抽選会で発表

ビジネス

9月PCE価格、前年比2.8%上昇・前月比0.3%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中