最新記事

中国経済

遊び心と技術が小売りを変える!? 売上約3兆円のアリババ独身の日セール

2017年11月20日(月)11時17分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

独身の日セールに合わせて出店された期間限定の快閃店(ポップアップショップ)。オンラインとオフラインの融合を目指した、さまざまな施策が試みられた(写真提供:アリババ)

<11月11日の「双十一」セールは14万ブランドが参加し、1日で2兆8700億円が取り引きされた世界最大のセール。しかし、金額だけに注目していると重要なメッセージを見逃すことになる>

11月11日、中国では今年も「光棍節」(独身の日)の一大商戦が繰り広げられた。

独身の日の起源については諸説があるが、90年代に南京の大学で始まった民間の記念日との説が有力だ。恋人がいない者同士がパーティーを開いたり一緒に遊んだりする日として知られていたが、2009年に中国EC大手アリババグループのネットモール、Tモールが「双十一狂歓購物節」(11.11 グローバルショッピングフェスティバル)というセールを開始した。

初年度はわずか27ブランドが参加したのみで取引額も5000万元(約8億5000万円)に過ぎなかったが、翌年以後は爆発的に成長。今年は14万ブランドが参加し、取引額は1682億元(約2兆8700億円)を記録している。うち6万ブランドが海外からの参加だ。

takaguchi171120-1.jpg

上海の「双十一」セール発表会場にて(筆者撮影)

海外からの輸入をみると、国別では日本が1位を獲得。日本から売れた製品ではメリーズ、ムーニーの紙オムツが1位と2位。ヤーマン、リファという美容家電メーカーの機器が3位と4位。5位には基礎化粧品のウテナがランクインした。

今ではアリババ以外のEC企業、さらには百貨店などのリアル小売店も「双十一狂歓購物節」に参入し、米国のブラックフライデー(毎年11月の第4金曜日に行われるセール)を超える世界最大のセールへと成長した。

それにしても、なぜ独身の日がセールにつながるのだろうか? 答えは「遊び心」だ。モテないやつらでわいわい楽しもうという一日を、アリババは「買い物しまくれば寂しくない」へと変えた。若者文化をうまく消費の起爆剤へと転換したのだ。

今年のテーマ「ニューリテール」とは?

アリババグループの蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)副会長は11月10日、海外メディア向け記者会見でこう説明した。「(アリババが創業した)99年から現在までに中国の1人当たりGDPは10倍になった。その購買力を解放する日が双十一だ」

日本人もバレンタインデーや恵方巻き、ハロウィンなど新しいお祭り騒ぎを作ることに長けているが、中国人も負けていない。しかも一部業界だけのお祭りとせずに、全ジャンルを巻き込む一大商業イベントにすることに成功している。

今年の「双十一」も遊び心が全開だった。アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)が主演を務め、ジェット・リーやサモ・ハン・キンポー、朝青龍とカンフーバトルを繰り広げる映画『功守道』がネットで公開されたほか、Tモールのアプリにはお年玉ゲーム、猫集めゲームが実装された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中