最新記事

SDR

人民元がIMF主要通貨になったら?

確実視される「SDR通貨バスケット」入りがもたらす影響を読み解く

2015年11月17日(火)16時00分
マーシー・クオ、アンジェリカ・タン

米戦略に影響 アジアへのリバランス政策の先に中国が立ちはだかる Tyrone Siu-REUTERS

 IMF(国際通貨基金)が中国の人民元を、「特別引き出し権(SDR)」と呼ばれる準備資産の構成通貨に加えるかどうか──その最終決断が近づいた。世界貿易や金融システムにおける通貨の重要性を反映するSDRの「通貨バスケット」は今、米ドル、ユーロ、円、英ポンドの4通貨から成る。そこへ人民元が仲間入りすれば、中国経済はその重要性にお墨付きが得られることになる。

 一方で人民元がSDRに採用されれば、中国の金融政策や市場にはさらに透明性が求められる。人民元SDR採用の見通しと影響について、元米造幣局長で現在は貴金属投資顧問業フォートレス・ゴールド・グループの主任ストラテジストを務めるエドマンド・モイに聞いた。

――人民元のSDR採用に向けて、何が判断基準となるのか。

 IMFによれば現在の焦点は、人民元を採用するかどうかより、いつ採用するかだ。タイミングを決める大きな要因は2つある。

 1つは輸出額の大きさ。中国はこの点を十分に満たしている。

 もう1つは、人民元が自由に取引できること。これについても中国は大きく前進した。人民元建ての貿易決済を大幅に増やしているし、外国からの投資にも門戸を開き始めている。

 しかしアメリカは今も、中国の金融改革が進んでいないことを懸念している。人民元の採用について、アメリカはIMFでいわば拒否権を持つ立場にあるから、その見解は重要だ。

――国際通貨システムで、人民元はどのような役割を担うのか。

 中国の経済規模と貿易額の大きさから、人民元の国際的な役割は重要性を増している。現在では中国の貿易額の25%近くが人民元建てで決済される。5年前にはわずか0.02%だった。

 ただし、ドルが国際通貨制度で担う役割に比べればはるかに小さい。人民元が統計上で意味ある存在になるにはまだ何年も、あるいは何十年もかかるだろう。

――SDRに採用されれば、中国の金融政策は規制の透明性向上など一層の自由化が必要になるのか。政治や法制面ではどういった改革が求められるだろう。

 そこが肝心な問題だ。中国は国際経済の指導国の仲間入りを果たせる程度には自由化を進めるかもしれない。しかし中国は、自由化とは基本的には欧米的な手法であり、自国の「国家資本主義」のほうが優れているという見方を示している。

 私は計画経済より自由市場のほうが優れていると考えている。中国も市場原理で決まる為替相場、金利の自由化、金融業への規制と監督の強化、資本勘定の自由化といった改革を進めれば、後戻りは難しくなる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中