最新記事

投資

なぜ商品価格は下がり続ける?

原油以外の商品も下落している背景には、アメリカの金融「引き締め」がある

2015年1月7日(水)13時26分
ジェフリー・フランケル(ハーバード大学教授)

原油だけじゃない 砂糖、大豆、プラチナの商品価格も軒並み下がっている Michael Dalder-Reuters

 この半年で、原油価格は40%も下がった。石油輸入国には朗報だが、ロシアやベネズエラ、ナイジェリア等の石油輸出国にとっては悲しい話だ。要因として、アメリカのシェールガス・オイル開発を挙げる声もあれば、OPECが減産に合意できないからだという見方もある。

 だが、いずれも一面的な捉え方だ。鉄をはじめ、金、銀、プラチナ、砂糖、綿、大豆など石油以外の商品価格も下がっているからだ。

 実際、大半のドル建て商品価格指数は14年下半期に大きく下げている。個々の商品の価格形成にはその分野特有の要因が絡んでいるが、下落が広範囲に及んでいるとなればマクロ経済的な要因が考えられる。

 例えばデフレだ。確かにいくつかの国ではインフレ率がマイナスに転じている。しかし商品価格の下落率は物価全般の下げ方を大きく上回っている。デフレ以外の要因もあるはずだ。

 では、世界的な景気低迷でエネルギーや天然資源、農産物の需要が減っているせいだろうか。確かに下半期以降、多くの国で経済成長は鈍化し、GDP予測も下方修正されている。

 だがアメリカという重要な例外がある。アメリカの経済成長はますます旺盛で、14年第2・第3四半期の推定成長率は年率換算で4%を超えている。ところがそのアメリカでも商品価格は下がる一方。それに対し、英エコノミスト誌が算出するユーロ建ての商品価格指数はこの1年で上昇した。下げているのはドル建ての商品価格だけなのだ。

 実は国の金融政策も商品価格の動向を大きく左右している。FRBが10月に量的緩和を終了し、15年中にも短期金利の引き上げに踏み切るとみられることから、アメリカでは金融引き締めへの転換と利上げの観測が強まっている。

高金利が生む4つの流れ

 ここで思い出されるのは過去のパターンだ。70年代と02〜04年、07〜08年の実質金利(インフレ調整済み)の下落は実質の商品価格の上昇を伴っていた。逆に、80年代にアメリカで実質金利が急騰した際はドル建ての商品価格が急落した。FRBがドル紙幣を増刷すれば、そのお金が商品市場に流れて価格をつり上げ、逆に金利が上がると価格は下がる。それは直感的にも理解できるが、具体的にはどうなっているのだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏で財政緊縮巡りデモ・スト、100万人参加と労組 

ワールド

国連安保理、ガザ停戦決議を否決 米が6回目の拒否権

ワールド

人民元相場、米国よりも欧州にとってより大きな問題=

ビジネス

SBG「ビジョン・ファンド」、2割レイオフへ AI
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中