最新記事

新興国

BRICSはもう古い!次にくるのは意外な主役

インドは期待外れに終わり中国にも陰りが最も成長する国は何とアフリカのモザンビーク

2013年10月24日(木)13時58分
アンソニー・フェンソム

ここも成長株 経済好調で建設ラッシュに沸くフィリピン Romeo Ranoco-Reuters

 21世紀初頭の経済成長の主役は中国だったが、今後10年間は別の新興国が台頭しそうだ。英市場調査会社ビジネス・モニター・インターナショナル(BMI)が発表した22年末までの実質GDP成長率予測を見ると、モンゴルの114・5%をはじめアジアの5カ国がトップ15入りを果たしている。

 トップ3はモザンビーク、タンザニア、イラク。ある程度のリスクを覚悟で投資先として検討してみるのもいいかもしれない。1位のモザンビークはなんと158.8%の伸びが見込めるというのだから。

 東南アジアも人口が現在の6億人からさらに増え、大きな市場に近いこともあって、世界有数の成長株が存在する。ミャンマー(ビルマ)経済は2倍近くに成長、スリランカ、カンボジア、ベトナムも90%前後の伸びが見込まれる。

 BMIによれば、新興国のGDPは00年には世界全体の25%だったが22年までに55%近くに達する。それでも国民1人当たりGDPは先進国が6万1662ドル、新興国は1万423ドルで先進国のほうが6倍豊かだ。

 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)も完全に姿を消すわけではない。中国とインドの今後10年間の成長率は80%を超える見込みだ。1人当たりGDPでインドは3339ドルどまりだが、中国は1万3260ドルで多くの人が貧困から抜け出すとみられる。

 一方、注目の15カ国のGDPを合わせても世界のGDPの約3%どまり。1人当たりGDPも大した規模ではない。

アジアの成長を下方修正

 01年に今後成長が期待できるブラジル、ロシア、インド、中国の新興国を「BRICs」と命名したのは、米金融大手ゴールドマン・サックス元幹部のジム・オニールだ(その後南アが追加された)。そのオニールが最近のBRICsの低迷ぶりを見て、BRICsは終わったと言い切った。「私ならCだけを残す。しかしそれではもう頭文字にする意味がないだろう」

 中国経済の2桁成長に陰りが見え、商品相場の下落がBRICsに重くのしかかっている。オニールはBRICsの年間平均成長率が01〜10年の8.5%から11〜20年は6.6%に鈍化すると予測。特にインドは「期待外れ」に終わり、ブラジルは不安定で、成長の大部分は中国が占めるという。それでも中国の7.5%の伸びは新たに1兆ドルの富を生むとオニールは言う。

 アジア開発銀行(ADB)は先週、アジアの成長率見通しを4年ぶりの低い水準に下方修正した。中国とインドの景気減速と、FRB(米連邦準備理事会)が量的緩和縮小に踏み切るという観測が新興国からの資金逃避を招いている状況を重く見たためだ。アジア太平洋地域の13年の成長は、中印経済の減速と量的緩和縮小観測の影響で、これまでの予測を下回るだろう。

 ADBによれば、14年には景気はやや上向くが、現在の状況はアジア太平洋地域が短期的な財政安定の確保に目を光らせると同時に、構造改革を加速して長期的な経済成長を維持する必要性を浮き彫りにしている。

 ADBは日本など先進国を除くアジアの成長率予測を4月時点から下方修正。13年は6.6%から6%に、14年は6.7%から6.2%に改めた。国・地域別では中国が13年は7.6%、インドは14年3月までの1年間で4.7%。東アジアは13年、14年とも6.6%。東南アジアは4.9%に減速すると予測している。

 それでもBMIの予測が正しければ、アジアのほかの新興国がすぐに台頭してくるはずだ。

From thediplomat.com

[2013年10月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中