最新記事

個人情報

フェイスブックに友達を売ってない?

2013年9月17日(火)14時53分
ウィル・オリマス(スレート誌記者)

 シャドウ・プロファイルの問題は、11年にアイルランド政府がフェイスブックを調査した際、プライバシー侵害を疑った点の1つだった。だが結局、アイルランド政府はこれを不問にした。

 それは、フェイスブックが情報を悪用していないと見なしたからだ。電話番号やメールアドレスを使って広告を送り付けたり、その情報を第三者に売ったり、(6月に発覚した情報漏洩が起きるまでは)サイト上で第三者が見られるようにはしていなかった。標榜しているとおり、友人を探す手助けをするためにしか用いていなかった。

うっかりすると友達を減らしかねない

 しかしパケットストームは、収集されたデータがハッカーや政府の監視活動の標的にされる危険性を指摘している。

 フェイスブックに言わせれば、「友達を探す」機能を利用する際にフェイスブックにアドレス帳へのアクセスを許可するユーザーは、それが何を意味するか納得しているはずだという。

 ただオンライン・プライバシー企業アバインのアナリスト、セーラ・ダウニーは、そうは思わない。「友達を探すためにこの機能を使っているという意識はあっても、自分の友達に関するデータベースを築くのに手を貸しているつもりはない」
小さなSNSやアプリはフェイスブックよりはるかに不用意に、ユーザーのアドレス帳から得た情報を扱っている。多くの企業は、フェイスブックより脆弱なセキュリティー体制しか取っていない。

 例えば新興SNSの「パス」は、ユーザーのアドレス帳に載っている人たちへの入会勧誘にかけては、フェイスブックよりはるかに積極的だった(批判を受けて方針を変更した)。

 ユーザーが誰と知り合いで、誰とつながりたいと思っているかを探り出す能力を最も磨き上げているSNSは、リンクトインだろう。

 会員に明示している以外の目的で個人情報を利用することがないよう注意を払っていると、同社のプロダクトマネジャー、ブラッド・モーニーは言う。「隠し事は何一つない」。ユーザーの信頼を裏切らないことは、同社のビジネスに欠かせない要素というわけだ。だが、リンクトインが考える「誠実」の定義がユーザーの考えと同じという保証はない。

 ほとんどの人はオンライン企業に保有されている自分の秘密情報の中で、シャドウ・プロファイルの重要性を恥ずかしい写真、私的なメッセージ、クレジットカードの番号より低く考えているだろう。しかしフェイスブックでさえ、SNS(フェイスブックも含めて)にアドレス帳を差し出す前に冷静に考えたほうがいいと言っている。

 友人を探し出してくれる機能は確かに便利だ。しかしそれと引き換えに、営利企業に友人の情報を提供していると、現実世界で友人を減らしかねない。

© 2013, Slate

[2013年8月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中