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オリンピック

五輪は大会より招致レースに経済効果?

2013年3月18日(月)17時02分
マシュー・イグレシアス(スレート誌経済・ビジネス担当)

スポーツ関連施設への投資は無駄

 これは、北京に限った話ではない。オリンピックを招致するために行う取り組みが経済に恩恵をもたらすとしても、それは巨大スポーツイベント自体が生み出すものではない。オリンピック誘致活動の最大の恩恵はスポーツ関連施設の整備ではなく、もっと一般的なインフラの整備だからだ。

 バルセロナ自治大学の五輪研究センターの研究は、「オリンピック関連投資のうち、スポーツ関連施設の建設費が全体の9・1%にとどまっている」ことを理由に、92年のバルセロナ五輪を称賛。対照的に、アトランタ五輪は「都市開発への波及効果を生み出さずに大会を組織しようとした」点で失敗だったと位置付けている。

 スポーツ施設への投資には概して経済効果がないと、この研究は遠回しに述べているのだ。アトランタの馬術センターのように、巨額の予算を投じた揚げ句、大会後には使われなくなる施設が建設されるケースは多い。

 オリンピック開催の経済効果を生み出せる都市は、オリンピックを口実に輸送・交通インフラに投資をしている。大会閉幕後も役に立つ施設を建設するのだ。

 要するにオリンピックはうまくいった場合でも、普通なら躊躇するような長期的投資に踏み切る方便でしかない。そればかりか、下手をすればもっと価値のある経済活動を妨げ、莫大な予算を食うお荷物になりかねないのだ。

© 2013, Slate

[2012年8月 8日号掲載]

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