最新記事

フェイスブック

グーグルへの刺客、グラフサーチの実力

フェイスブックが満を持して発表したSNS検索機能はどこまで斬新?

2013年2月6日(水)14時51分
マシュー・ザイトリン(ビジネス担当)

新兵器 「ほかのどの企業にも見られない試みだ」と胸を張るザッカーバーグ Robert Galbraith-Reuters

 きっとフェイスブックフォンに違いない......えっ、グラフサーチって何?

 フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグが先週、カリフォルニア州メンローパークの本社に記者を集めて発表したのが「グラフサーチ」。フェイスブック上にユーザーが投稿した情報を検索する機能だ。ザッカーバーグによれば、友達が好きなテレビ番組、映画、アプリを探せるということらしい。

 グラフサーチはグーグル検索のコピーまがいの機能ではない。グラフサーチが検索するのは「とてつもなく巨大で、絶えず変化を続ける人と人のつながりだ」と、ザッカーバーグは言う。ある人物が求める情報を探し出すにはグーグルの検索アルゴリズムを使うより、その人物のSNSネットワークを調べるほうがずっといい──これがグラフサーチの核心を成す考え方だ。

 例えばシカゴで一番のメキシカンレストランや、面白い政治小説、マルセイユの安くていいホテルを見つけるにはネットワーク内のおすすめ情報が役に立つということだ。「グラフサーチが提示するのはリンク先じゃない。ずばりその答えだ」と、ザッカーバーグは言う。
 
 検索界の巨人グーグルと、まだよちよち歩きのグラフサーチの根本的な違いは、検索の「手法」ではなく検索の「場所」にある。最近よく使われる「グラフ」という抽象的な言葉の意味は、簡単に言えばSNSにおける人と人のつながりの総和だ。

 フェイスブックで言えば、互いに1兆のつながりを持つ10億人のユーザーが投稿した2400億枚の写真を検索するということになる。「実現までに1年以上かかった。技術的にはとてつもない挑戦だ」と、ザッカーバーグが言うのも無理はない。

 皮肉なことに、会見でザッカーバーグが語ったことはグーグルのラリー・ペイジCEOが目指してきたことに極めて似ている。グーグルはただリンク先を提示するのでなく、自分たちが築き上げた世界の情報を通して答えを示す方法へと、検索機能を作り変えようとしていた。グーグルの世界にユーザーを引き留める必要に迫られた彼らは、自家製SNSまで作り上げた(それがグーグルプラスだ)。

FBに集まる「優良情報」

 フェイスブックには有利な点がある。そこに集まるのは、実在の人々が吟味して投稿した本音の情報ばかり。ユーザーが映画やレストランを選ぶとき、グーグルのアルゴリズムより友人たちの意見を頼りにすることをフェイスブックは期待している。

 グラフサーチを使えば、ユーザーは「ニューヨークに住む友達の友達で独身の女性」や「サンフランシスコで働く友達の友達のエンジニア」を調べることもできる。これなら出会い系SNSのOKキューピッドや人脈づくりSNSのリンクトインにユーザーを取られることもない。「ユーザーはずっと自分のネットワークにいる人たちの好みを検索したかった」と、ザッカーバーグは言う。

 グラフサーチが次の大ヒットになるのか。その答えは、グラフサーチでは検索できないが。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

トランプ氏、ウクライナ兵器提供表明 50日以内の和

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決

ワールド

トランプ氏、ウクライナにパトリオット供与表明 対ロ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中