最新記事

テレビ

Huluのサービス大放出は限界

放送から1日待てばほとんどの番組が無料で見放題だった動画配信サービスが、サービス改悪に着手したが

2012年7月11日(水)14時17分
ウィル・オリマス

うまみ減 有料版のHuluプラスが登場した裏には業界のさまざまな思惑が渦巻く Scott Eells-Bloomberg/Getty Images

 映画やテレビ番組が見放題の動画配信サービスHuluは、ユーザーにとってあまりにおいしい(日本では月額980円だが、アメリカでは無料)。最近少しうまみが減ったが、今のところまだまだ十分おいしい。

 ネット局とケーブル局のおびただしい数の番組を、無料で高解像度で、おまけに好きなときに見られるのだ。テレビよりはるかに魅力がある。ただし問題は、これからHuluがどうサービスを改悪するつもりかということだ。

 私はケーブルテレビに加入したことがない。年1000ドルほどの料金がばからしいと思うからだ。しかし仮に加入したとしても、08年にHuluが登場したときに間違いなく解約していただろう。Huluなら放送から1日待ちさえすれば、ケーブル局のほとんどの番組を無料で、どこででも見られる。

 ケーブルテレビには大きな欠点が3つある。面白い番組がなくてだらだらチャンネルを替え続ける、見たい番組が重なって家族げんかが起こる、基本プログラムにばか高い料金を取られる。この3つは、Huluを使えばすべて解決する。
しかし、これでは利用者に甘い汁を吸わせ過ぎだと、どうやらHuluは気付いたらしい。

 これがフェイスブックやYouTubeやアマゾンのような新興企業なら、市場を制するまで最高のサービスを続ければいい。それから上場して、ぼろ儲けの方法を考える。

 だが、Huluは新興企業ではない。NBCとニューズ・コーポレーション(FOXテレビの親会社)、ディズニー(ABCの親会社)、それに非公開投資会社を株主とする既存のメディア企業だ。なのに、新興企業のふりをしてメディアビジネスの古いモデルを守ってきた。

 だから、お楽しみは続かない。良過ぎるサービスを早くやめなくてはならない。そうでないと、親会社にしわ寄せが及ぶ。

 そこでHuluはサービス改悪に着手した。既に10年には、会員制有料サービス「Huluプラス」を導入している。

噂される次のステップ

 もともと「プラス」はHuluにはないサービスだけを提供していた。視聴できる人気番組の過去のシリーズを増やしたり、スマートフォンやブルーレイ、ビデオゲーム機での使い勝手を向上させたりした。

 だが今年になって、HuluプラスはこれまでHuluが無料でやってきたサービスに入り込み始めた。『Glee グリー』などのFOXの番組を翌日見られるのは、月7.99ドルを払うプラス会員だけになり、古いHuluのユーザーは8日後まで待たなくてはならなくなった。

 噂によれば、今後はHuluユーザーから「認証」を求めるネット局が増えるという。例えばABCのドラマ『モダン・ファミリー』を見るには、まずログインして、ケーブルか衛星放送サービスの有料会員であることを証明しなくてはならなくなるという。狙いは、増え続けるケーブル解約者にHuluの親会社の番組を無料では見せないようにすることだ。

 これは実にろくでもないアイデアで、人をばかにしている。今まで『モダン・ファミリー』のようなドラマは、テレビとアンテナがあれば誰でも無料で当日に視聴できたのだから。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中