最新記事

ビジネス

グーグル独禁法疑惑に「あの企業」の影

反マイクロソフトの急先鋒の一人だったシュミット会長率いるグーグルが、かつてのマイクロソフトと同じ苦境に

2011年10月31日(月)15時31分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

包囲網 公聴会で証言するグーグルのシュミット会長(9月21日) Larry Downing-Reuters

 グーグルに捜査のメスが入るよう、長年陰で働き掛けてきたマイクロソフトの苦労がようやく報われそうだ。

 グーグルのエリック・シュミット会長が9月21日、米上院司法委員会の反トラスト小委員会の公聴会に出席し、グーグルはネット検索事業で自社に有利になるような操作はしていないと証言。しかしグーグルが一部の議員から徹底的に追及されて、ライバルのマイクロソフトが10年以上前に苦しんだような独占禁止法訴訟に巻き込まれることになるだろう、とみる向きが多い。

 グーグルが恐れるべきなのは、独禁法に基づく調査を始めている米連邦取引委員会(FTC)に対して、上院が不利な報告をすることではない。FTCから提訴されることでもない。一番の問題は、捜査に長い年数がかかるため企業運営が停滞して、ライバルに後れを取ることだ。

 この事態を誰より喜んでいるのはマイクロソフトだ。90年代、ライバル企業が政府に対してマイクロソフトを独禁法違反で取り締まるようロビー攻撃を仕掛けたおかげで、同社はまさにその運命をたどった。

疑いはすぐには晴れない

 皮肉にも、当時の反マイクロソフト運動の急先鋒の1人が、サン・マイクロシステムズとノベルの取締役を務めたシュミットだった。シュミットらの抗議を受けて、司法省は98年にマイクロソフトを提訴。01年に和解が成立したが、同社が受けたダメージは計り知れない。

 裁判沙汰で業務に集中できずに勢いを失い、企業イメージも低下。さらに悪いのは競争に対して弱気になったこと。つまり、マイクロソフトは敗者になった。

 今のマイクロソフトは、ライバル企業に攻撃されたのと同じ方法でグーグルへの報復をもくろんでいる。マイクロソフトの元取締役の1人は、かつての仇敵シュミットが苦境に立たされた姿を見て思わずほくそ笑んだと話す。「グーグルは、独禁法違反の疑いは明確な説明と合理的な分析によってすぐに晴れると思っている。政治と権力の世界における駆け引きはそんなに甘いものではない、と彼らが気付くのはいつになることか」

 グーグルの関係者によれば、マイクロソフトは反グーグルのロビー活動などに年間1500万ドルを費やしているという。多くの場合、その原動力となっているのは「感情的なしこり」だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングロ、株主から企業価値向上圧力 BHPの買収提

ビジネス

米ウィーワーク、再建計画巡り債権者と和解 創業者の

ワールド

米軍のガザ浮桟橋建設費、推計3.2億ドルに倍増

ビジネス

日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退=元IMF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中