最新記事

欧州

フィンランド右派が脅かすEU金融安定化策

議会選挙で債務危機に陥ったポルトガルなどの救済に反対する超保守政党が大躍進。欧州の健全国に反EUの機運が広がる前兆か

2011年4月19日(火)17時22分

反EUで躍進 政権入りの可能性も出てきた「真のフィンランド人」のソイニ党首 Lehtikuva-Reuters

 フィンランドで17日に行われた議会選挙で、反ユーロを掲げる超保守主義の政党「真のフィンランド人」が大躍進した。同党は財政が破綻したポルトガルなどへの欧州連合(EU)の救済策に対して国民の不安を煽ることに成功し、大幅に議席を増やした。今後、フィンランド国政だけでなくEUの行く末にも大きな影響力を与えることになりそうだ。

 EUに加盟する財政難の国家を救済することに断固反対している真のフィンランド人は、得票率を4%から19%へと5倍近くも伸ばし、第3党になった。連立政権入りの可能性もあると、UPI通信は報じている。

 フィンランドは比較的安定した経済成長を続けていて、財務状況も健全だ。経済好調にもかかわらず真のフィンランド人が躍進したことは、今後ヨーロッパ中に政治的ポピュリズムが拡大していく前兆ではないか、と見られている。その原動力は、放漫財政と金融危機の煽りで財政破綻した国々を救済させられることに対する、人々の怒りだ。

 ティモ・ソイニ党首率いる反EU政党、真のフィンランド人は、以前は移民の増加や中絶、同性婚などに反対してきたが、前回の選挙では少数の議席しか獲得できなかった。それが最近、敵意もあらわにEUの救済策に反対する選挙戦術に転換。それが奏功した。

くすぶる不満を追い風に

 フィンランドは昨年、EUのギリシャ救済に参加。アイルランドとポルトガルを支援するEUの基金にも資金を融通している。

 フィンランド議会は他のEU諸国とは異なり、救済策に対して採決を行う権限を持つ。支援策の阻止を目指す真のフィンランド人の躍進によって、計画が承認されずに行き詰る可能性もある。

 ソイニはさらに、3月にブリュッセルで行われたEU首脳会議で可決された欧州安定メカニズム(ESM)の創設についても反対していると、UPI通信は報じている。財政難に陥ったユーロ加盟国を支援する常設制度だ。

 今回の選挙で、真のフィンランド人の得票率が19%だった一方で、ユルキ・カタイネン副総理兼財務相率いる中道右派の国民連合が獲得したのは20.4%。かろうじて第1党の座を守った。マリ・キビニエミ首相の中央党は7%以上も得票率を落とし、15.8%で惨敗。キビニエミは辞意を表明したとUPI通信は報じた。

 EUの健全国家フィンランドで起こった波が、救済策への不満がくすぶるEU諸国を飲み込むことになるかもしれない。

GlobalPost.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中