最新記事

自動車

中国車の星BYDが急減速

国は世界最大の自動車市場へと躍進したが、新興国産メーカーの走りはまだ不安定

2011年3月31日(木)16時01分
トマス・ミュシャ

大物がバックに ビル・ゲイツ(右端)とバフェット(右から2人目)も出席したBYDの新車発表会(2010年9月) Jason Lee-Reuters

 中国は過去数年にわたり、自動車産業の中心的な存在であり続けてきた。

 理由は簡単だ。中流消費者の増加と急速なインフラ整備に加え、安価な自動車の供給が増したことで、この国は世界最大の自動車市場へと成長を遂げたからだ。

 今年の中国での新車販売台数は1800万台に上ると見られる。これはアメリカと欧州(ともに1400万台)を上回り、日本の3倍以上にもなる数字だ。

 ばら色の未来は米大物投資家ウォーレン・バフェットをも魅了した。彼がCEOを務める投資会社バークシャー・ハサウェイは08年に比亜迪汽車(BYD)株の10%を取得している。

 だが英エコノミスト誌によれば、BYDは問題を抱えているようだ。発表が予定されていたハイブリッド車のうち2つのモデルの開発が遅れている間に、ドル箱だった低価格の小型セダンF3が過当競争の中国であっという間に時代遅れになり、成長スピードがかげり始めたのだ。以下にエコノミスト誌の記事を引用しよう。


 昨年の総売上高は前年比18%に達したが、同社が見込んでいた70〜80万台には及ばなかった。中国市場全体は30%以上の成長を遂げたが、BYDにとっては悪いニュースがまだ続きそうだ。

 香港の証券会社CLSAのスコット・ラプリーズはBYDの販売台数が昨年の52万5000台から、今年は42万5000台に落ち込むと予測する。この国の輝かしい光の1つである中国自動車産業の巨人にとってはショッキングな下落幅だ。


 一方で米自動車産業は今年、低価格車の登場と米経済が若干持ち直したおかげで成長が見込まれる。今年2月の新車販売台数は、大方の予想を上回る前年同月比27%増となった。アメリカでは、政府が「エコカー買い替え補助金」制度を実施した09年以来となる高水準だ。

 今のところ今年の売上高でトップを走るのはGMとトヨタで、その後を日産がぴったりと追走している。GMと日産は業界トップ水準の割引を行い、トヨタは昨年のリコールショックから素早く立ち直りつつある。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド通貨ルピーが史上最安値更新、1ドル90ルピー

ワールド

フィリピン中銀、成長鈍化で12月利下げ可能性高まる

ビジネス

物言う投資家ジャクソン氏、暗号資産トレジャリー企業

ワールド

ロシア経済、ルーブル高に適応必要 輸出企業に逆風=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中