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トヨタを待ち構える米議会の用意周到

2010年2月23日(火)19時17分
マシュー・フィリップス

刑事責任視野に連邦大陪審も調査開始

 トヨタの広報担当マイク・ミケルズは本誌の取材に対し、トヨタ車は「屋根の強度でも別のテストでも全米安全基準に達するか、上回っている」と回答している。「トヨタは定期的に製品のデザインや検査、評価、技術について文書を作成している。慣例に基づき、ビジネス上または法的な必要がある限りトヨタは文書を保持する」

 トヨタが故意に証拠を隠したかどうかは分からない。グリーンの再提訴では、彼女の弁護士ジェフ・エンブリーがビラーに法廷への出席を求め、ビラーはそれに応じた。だが裁判が始まる数分前、トヨタは裁判の緊急一時停止を認めさせることに成功。下院監視・政府改革委員会のメンバーのダリル・アイサ下院議員(共和党)はすぐに、ビラーが保有する内部文書の提出を求めた。

「ビラーの発言が正しければ、同社は組織的に裁判所の命令に違反する取り組みを行っていることになり、トヨタに深刻な困難をもたらすだろう」と、エンブリーは言う。

 トヨタはまず23日に下院エネルギー商業委員会の公聴会に出席するが、それに先立ってダブルパンチを見舞われた。22日には連邦大陪審がトヨタ車の安全問題について刑事責任を視野に入れた調査を開始。米証券取引委員会も、「急加速」と「情報公開」に関する文書の提出を求めた。

 下院監視・政府改革委員会の公聴会は24日午前10時(米東部時間)に始まる予定だ。出席するトヨタの豊田章男社長には、厳しい質問が浴びせられるだろう。ビラーの文書から浮上したあらゆる疑惑が追求されるはずだ。

 公聴会には全米高速道路輸送安全局(NHTSA)が出席し、ステート・ファーム保険会社が公開した電子メールに関する質問を投げ掛ける可能性もある。同社はNHTSAに対し、トヨタ車を運転中に意図しない急加速をすることがあると、04年の段階で報告していた。

 さらには、日本とアメリカの文化の違いや、その違いが安全や情報公開の問題につながった可能性についても質問されると見られている。

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