最新記事

アメリカ経済

アメリカの消費者は死んでいない

借金苦と高失業率で消費を控えていたアメリカ人がついに財布のヒモを緩めだした

2009年10月23日(金)16時54分
ロバート・サミュエルソン(本誌コラムニスト)

明るい兆し 消費が拡大し、小売業の好調ぶりが目立つ Jonathan Ernst-Reuters

 アメリカと、そして世界にグッドニュースだ。やはりアメリカの消費者は死んでいなかった。

 アメリカの消費者は借金苦と高い失業率のトラウマから立ち直れず、今後も消費は停滞すると一般的には思われている。つまり、世界最大の経済国の景気回復が、他国よりも後れを取るということだ。アメリカでは消費者支出がGDP(国内総生産)の約70%を占める。消費の冷え込みは自国の足かせとなり、貿易相手国の利益にも悪影響を及ぼす。

 この考えに異を唱えるのが、エコノミック・アナリシス・アソシエーツ社のエコノミスト、スーザン・スターンだ。消費者の購買力は既にアメリカ経済の回復を後押ししており、この傾向は来年も続くと彼女は言う。なかでも自動車と軽トラックの販売台数は、今年の1060万台から来年は1440万台に回復すると予測。住宅の売り上げも、今年の58万5000戸から来年は103万8000戸へと、ほぼ倍増を見込む。個人消費は今年0.5%減少したが、来年は4.8%上昇するという。パソコンから車、チーズまで、外国の輸出業者は恩恵を受けるだろう。

人々は借金を返したか破産した

 近頃の個人消費の強さは「キャッシュ・フォー・クランカーズ」(燃費のいい車に買い換えれば助成金を出す制度)によるものとする考えを、スターンは否定する。彼女はまた、高額の負債や高い失業率による悪影響が誇張されてきたと指摘。実のところ、人々か抱える負債は劇的に減少しているという。

 平均的な世帯の可処分所得のうち月ごとの利息や元金の支払いが占める割合は、07年8月に15.8%という最高値を記録した後、現在では13.5%にまで低下した。不況下ではかなり低い割合だと言える。アメリカ人は既に借金を返したか、そうでない人は自己破産してしまっている。さらに金利も低下。こうした要因が、負債という重荷を軽減した。

 一方で株価と、株価ほどではないが不動産価格の回復も各世帯の純資産(資産から負債を引いたもの)を安定させている。スターンの見積もりでは、米世帯の純資産は今年3.7%増加し、来年は6.9%増加する。08年には17.2%も縮小していた。これも消費者を勇気づける要因だ。

 確かに、9.8%という失業率はぞっとする高さだし、これからもしばらくは高いままだろう。スターンは来年の失業率を9.6%と予測する。だがこの数字に表れていないのは、職を失う人の割合が激減することだと彼女は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、4日から訪米 米国の関税措置巡り

ワールド

ロ朝首脳が会談、派兵にプーチン大統領謝意 支援継続

ビジネス

EU、ステーブルコイン規制の抜け穴ふさぐべき=EC

ワールド

中国が軍事パレードで新兵器披露、抑止力のメッセージ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中