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フランス

サルコジが大銀行のボーナス減らし

欧州発の新たなトレンドになるか、それともウォール街を利するだけか

2009年9月9日(水)14時37分
トレーシー・マクニコル(パリ支局)

 なぜフランスのサルコジ大統領は強欲な銀行家の批判に躍起になっているのだろうか。

 イギリスやアメリカと比べれば、フランスの銀行はかなり安定している。国の支援もさほど必要としていないし、役員ボーナスだって米金融大手ゴールドマン・サックスなどに比べればずっと少ない。

 先進国のなかではフランス経済の立ち直りは早いほうなので、株価は上昇しつつあるし、失業率も安定している。

 ではなぜサルコジは浮かない顔なのか。この平穏な状況が永遠に続くはずがないからだ。専門家は、各企業が今年の春と夏に発表した人員削減の影響が本格的に表れるのはこれからだと考えている。そこでサルコジは、秋になって労働者から不満の声が上がる前に先手を打っているのだ。

逆らえば政府の仕事はなし

 サルコジは大手金融機関BNPパリバのボーナス総額10億ユーロを半分に減額させるとともに、大手銀行に対してボーナスの一部を長期的な業績に連動させるよう求めた。この義務に違反した銀行は国営事業に関われなくなる。

 9月24・25日に米ピッツバーグで開催されるG20(20カ国・地域)首脳会議で、フランスは各国の手本になるだろうとサルコジは豪語。実際、彼の手法はヨーロッパの首脳陣に受け入れられつつある。

 だが彼らが本当に闘うべき相手はウォール街だ。金融機関の救済が一段落したアメリカは、高額ボーナスの存続を受け入れているようにみえる。

 長期的に見れば、サルコジらヨーロッパの指導者たちは、世界の金融の中心地としてのウォール街の地位をさらに強固にし、自国の金融界を危険にさらしているだけ
なのかもしれない。 

[2009年9月16日号掲載]

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