最新記事

私がフェースブックをやめた理由

フェースブック
過去か未来か

打倒グーグルの最有力候補は
会員5億人の「お友達帝国」

2010.05.25

ニューストピックス

私がフェースブックをやめた理由

プライバシー侵害の軌道修正は反省のフリをしているだけ。フェースブックにとってユーザーは「商品」でしかない

2010年5月25日(火)17時39分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 マーク・ザッカーバーグは謝罪したわけではない。それでも、人気ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェースブック創設者でCEO(最高経営責任者)でもある26歳の彼は、(微妙な)軌道修正を約束した。
 
 きっかけは、フェースブックがプライバシー保護(実際にはプライバシー侵害)に関する方針を変更し、ユーザーの怒りを買ったこと。ワシントン・ポスト紙への寄稿のなかで、ザッカーバーグは無垢な少年のような口調で、「よりオープンでつながった世界がいい世界」であり、方針変更の目的は情報を共有しやすくすることだったと主張した。

 さらにザッカーバーグは、ユーザーの怒りを鎮めるため、プライバシー管理設定を再度見直す予定だとも書いている。

 この「見直し」は実際には大したものではないと思う。また、仮に大掛かりな変更を行ったとしても、私にとってはもう遅すぎる。

 一連のトラブルが勃発したのは4月。フェースブックが行ったプライバシー管理設定の変更によって、より多くの個人情報がウェブ上に公開されることになった。さらに個人情報の一部はイエルプ、パンドラ、マイクロソフトなどの提携企業と共有されるという。

 ITジャーナリストは一斉に批判の声を上げた。一部のユーザーはフェースブックを退会すると断言し、ヨーロッパやカナダ、アメリカの政府関係者も強く反発している。

 フェースブックは「新方針そのものに問題はないが、説明不足だった」という馬鹿げた主張を広めようとした。それでも批判が収まらないと、ザッカーバーグは仲間と相談して、変更を撤回する道を模索。そして5月24日、複雑すぎる(わざと複雑にしているという指摘もある)プライバシー管理の設定をもっとシンプルなものに改善すると約束した(ちなみに、ワシントン・ポストのドナルド・グラハム会長はザッカーバーグの友人で、フェースブック役員でもある)。

本当の顧客は広告主?

 これで丸く収まった? とんでもない。それでも、フェースブックが手の内を見せたことで、ユーザーは同社の本当の姿を理解できる。

 フェースブックが突然、信頼に足る企業に生まれ変わると期待するのは愚かすぎる。同社はこの5年間、プライバシーに関する方針をたびたび改定してきたが、その方向性は常に同じ。そして、そのたびに同じ光景が繰り返される。

 ユーザーが不満の声を上げると、フェースブックはまず時間稼ぎをする。そのうちに反論を始めたかと思うと、今度は深く後悔しているフリをして変更を撤回する──ただし、撤回するのは変更のごく一部。結局、以前より多くの個人情報が開示されるようになったままであることに、誰も気づかないようだ。そして、批判の嵐が収まると、また新たな変更が発表される。

 要は、フェースブックは個人情報を必要としているのだ。同社のビジネスはそのうえに成り立っているのだから。

 重要なのは、フェースブックにとってあなたは顧客ではなく商品だということ。真の顧客は広告主だ。あなたの存在が有用なのは、他のユーザーとセットにされて広告主に売られる商品だから。個人情報を多く開示するほど、あなたの価値も上がる。

 2005年には、同社のプライバシーポリシーは1文だけだった(仲間以外の誰かにあなたの情報が共有されることはない、とある)。それが、今では憲法より長くなり、法律家でなければ解釈できない。

 同社はなぜ、05年のシンプルな方針を変えてしまったのか。勝手な推測だが、私はユーザーではなく広告主の意向のせいではないかと思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国非製造業PMI、4月は51.2 拡大ペース鈍化

ワールド

原油先物は小幅続落、ガザ停戦協議受け 米FOMCに

ビジネス

仏ロクシタン、株式を非公開化 18億米ドルで香港上

ワールド

インドネシアのルアン火山が再び噴火、警戒最高レベル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中