コラム

アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧

2026年03月30日(月)10時50分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2026 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<先日の冬季五輪で金メダルを獲得した米国代表のアリサ・リュウと、中国代表のアイリーン・グーは、同じアメリカ生まれの「中国人」。共通点も多いが、決定的に違うところがあった>

先頃行われたミラノ・コルティナ冬季五輪で金メダルを獲得した米国代表のフィギュアスケート選手アリサ・リュウと、中国代表のフリースタイルスキー選手アイリーン・グーには共通点がある。共に米カリフォルニア州生まれで中国にルーツを持ち、アリサは父子家庭、アイリーンは母子家庭で育った。ただし、2人には対照的な部分も多い。

アリサは、1989年の天安門事件で弾圧されアメリカへ亡命した父親を持つ。そのため今回の金メダル獲得を、海外に亡命した中国人はまるで自分の娘の快挙のように喜んだ。約2年間の引退期間を経て、中国式の家長制的管理から完全に離脱したアリサは、自らの意思で五輪の舞台に復帰し、束縛から解放された自由な演技で大きな拍手を浴びた。「メダルで自分の価値が決まるわけじゃないし、メダルで自己肯定感を得ているわけでもない」との言葉も印象的だった。


一方、中国代表として出場したアイリーンは国内外の中国人の間で賛否両論だ。海外の反共産党・自由派は、アメリカで生まれながらあえて中国代表を選んだ彼女を「両取り」を狙う存在とみる。中国国内でも、エリートとして教育に恵まれた彼女に好感を抱かない人々がいる。中国政府や官製メディアが彼女を強く称賛すればするほど、貧富の格差や階層の固定化に対する人々の反感が増幅されている。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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