コラム

イスタンブールの匂いに誘われ、非現実的な世界へ

2015年08月03日(月)12時00分

 今や絶大な人気を誇り、生活の一部にさえなった感のあるインスタグラム。多くの才能ある写真家、アーティストがインスタグラムを活用し、世界中を感銘させ、楽しませている。それを見過ごすなんてあまりにも勿体無い。このブログではそんなInstagram フォトグラファーたちとその作品を紹介します。

Beyoglu - Istanbul

Elif Gulen (Suyabatmaz)さん(@fisheyedreams)が投稿した写真 -

Dreaming - Ferry - Istanbul

Elif Gulen (Suyabatmaz)さん(@fisheyedreams)が投稿した写真 -

 一回目は、どこか神秘性に包まれた、イスタンブール在住のエリフ・スヤバトゥマズ。作品は、ダーク性を漂わせながら、同時に詩的で夢のような匂いを孕んでいる。大半はイスタンブールで撮影されたもので、見るものを非現実的な世界に誘ってくれる。かつてビザンチン、オスマン帝国の首都であり、ヨーロッパとアジアに跨って発展してきた十字路が持つ繁栄と争いの二律背反的な匂いかもしれない。

 とはいえ、街並みの匂いを作品に同化させ、自分のものとして発展させることは並大抵ではできない。それは、彼女のある種複雑なアイデンティティーから来ているのかもしれない。アメリカ生まれのトルコ育ち、父は画家でクリスチャンのアメリカ人、母はムスリムのトルコ人だ。まったく世俗的に育てられた。彼女自身、どの宗教心もなく、西洋、東洋の自分に合う部分だけを吸収したいという。

 また、アカデミックの専門はアート&デザイン。本職もむしろ、グラフィック・デザイナーだ。そして、近代化されているとはいえ、トルコではまだ女性への差別や偏見が根強い。こうしたバックグラウンドが、彼女の作品スタイル、世界観に大きな影響を与えたのだろう。

 ちなみに、インスタグラムの作品はスマートフォンでHipstamatic というアプリの中にあるデジタル・フィルムとレンズを前もって設定して撮影したもので、ポストプロダクション的な(撮影後に行う)加工はしていない。言ってみればフィルム時代の撮影様式とまったく同じなのである。

今回ご紹介したInstagram フォトグラファー:
Elif Suyabatmaz @fisheyedreams

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガス管「シベリアの力2」、中国とルート・供給量で合

ワールド

パレスチナの国家承認、日本は「総合的に検討」=林官

ワールド

マレーシア中銀、予想通り金利据え置き 「物価安定の

ビジネス

JPモルガン、ドイツで個人向けデジタル銀行 来年立
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story