コラム

大リーグサイン盗撮問題、まずアストロズに厳罰

2020年01月14日(火)18時15分

今回厳しい処分を下したマンフレッドMLBコミッショナーは、野球人気が下火になりつつある中での疑惑に危機感を持っていたのだろう Orlando Ramirez-USA Today/REUTERS

<キャッチャーの出すサインを望遠レンズで盗撮していた悪質な問題に、MLBは極めて厳しい処分で臨んだ>

2017年にワールドシリーズを制覇した、ヒューストン・アストロズに関しては、「サイン盗撮」疑惑が問題になっていました。疑惑の内容は、バックスクリーン近辺から、望遠レンズでキャッチャーの出すサインを盗撮、その内容を解析して球種をバッターに対して「音で伝達」していたという悪質なものです。

この疑惑については、マンフレッドMLBコミッショナーを中心に捜査が進められ、今回、処罰が発表されました。1月13日に発表された処分では、まず、ジェフ・ルーノウGMと、AJ・ヒンチ監督には「2020年シーズン全面職務停止」ということになりました。加えて2020年と21年の2年間、アストロズはドラフト一巡目、二巡目の指名禁止、さらに500万ドル(5億5000万円)の罰金が課されています。

ルーノウGMと、ヒンチ監督は、「自身の関与は否定」しつつもコミッショナーの裁定には従うと表明しましたが、球団からは即時解雇されました。両名ともに、制裁期間内はいずれの球団の仕事もできないことになっています。相当に厳しい処罰内容ですが、最終的に2017年のワールドシリーズ優勝という栄誉は剥奪されなかった以上、処罰対象の両名も、球団も裁定を受け入れるしかなかったのだと思います。

さて、この事件ですが、まず明るみに出た経緯が興味深いと思います。まず2017年にアストロズに在籍していたマイク・フィアーズという現役の投手が内部告発を行いました。そしてこの事態を深刻な問題だと捉えた、ケン・ローゼンタールというスポーツジャーナリストが、雑誌「アトランティック」誌上で告発しました。

今後はレッドソックスへの処罰が焦点

ちなみに、ローゼンタールはワールドシリーズの独占放映権を持っているFOXスポーツ社の契約評論家でもあり、全米の野球ファンであれば知らない人はいないという著名な人物でもあります。そのような業界の内部の著名人が迅速に告発に動いたというのは特筆に値すると思います。また、ファイアーズは現役選手として内部告発した後、デトロイト・タイガースを経て、現在はオークランド・アスレチックスでプレーしています。

一方で、今回発表されたコミッショナー報告書では、今回の処分対象とはされていないものの、2人の監督が名指しで事件への関与を指摘されています。

1人は現在、ボストン・レッドソックスのアレックス・コーラ監督です。コーラ監督については、アストロズのベンチコーチだった時期に、今回暴露された「サイン盗撮の方法をセットアップした」人物の1人だとされています。実は、そのレッドソックスについても同様の疑惑があり、コーラ監督への処罰は、その調査報告を待って行われる可能性が濃厚と報じられています。

もう1人は、今年からニューヨーク・メッツの監督に就任したカルロス・ベルトランで、2017年にアストロズの選手として、この「サイン盗撮」に関与していたと、報告書の中で名指しで指摘されています。コミッショナーからの処罰対象にはなっておらず、従って一方的に解雇されることはないと思いますが、今後の流れ次第では進退問題に発展する可能性もあるかもしれません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米経済、イラン情勢の打撃なし 海峡通航徐々に再開と

ワールド

EXCLUSIVE-イラン新最高指導者、米との緊張

ビジネス

独ZEW景気期待指数、3月は-0.5に急低下 中東

ビジネス

JPモルガン、英利下げ時期の予想を先送り 27年第
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story