コラム

佐藤琢磨選手のインディ500優勝は大変な快挙

2017年05月30日(火)16時10分

例えばですが、映画の『ワイルド・スピード』シリーズの『TOKYO DRIFT』という作品があって、大ヒットしているのですが、その中では日本人というのは「ドリフト走行の神様」として手放しで絶賛され、憧れの対象として描かれています。要するにインディが好きな人は、日本のことを悪く思っていないようです。

ちなみに、80年代の日米自動車摩擦の流れで日本に対して悪感情を持っているグループは、基本的に「組合カルチャー=左派」になります。日本でも有名なマイケル・ムーア監督は、実は「デトロイトを潰したのは日本」という感情をかなり深いところに抱えていて、日系記者などとイザコザを起こしていますが、彼が良い例です。

ですから、むしろ佐藤選手の優勝で、草の根保守における日本のイメージは『ワイルド・スピード』との相乗効果でさらに良くなっていくかもしれません。

【参考記事】「これでトランプを終わらせる」マイケル・ムーアが新作を製作中

その意味で言えば、実は寿司がどうとか、アニメがどうといういわゆる「クールジャパン」というのは、真ん中から左のカルチャーで、地域的には東海岸と西海岸主導で来ている(今は完全に全国的ですが)面があります。さらに、「クールジャパン」が左にアピールする一方で、モータースポーツが右にアピールするというわけで、日本文化はアメリカ国内で全方位にアピールできるということになるでしょう。

佐藤選手の勝因ですが、チーム力とか資質とかもあると思いますが、アメリカのコミュニティに溶け込んで、ライバルたちとも友情を結び、その相互の関係性の中から勝っていく生き方を学んでいるようです。

まあ、燃料(現在はエタノールが主体)をジャブジャブ燃やし、大事故を起こすのは当たり前というインディは、カルチャーとしては時代の先端では全くなくなってしまいました。それでも佐藤選手の優勝は、大いに称賛したいと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米パラマウント・スカイダンス、番組制作に来年15億

ビジネス

オリックス、カタール投資庁とPEファンド 両者で約

ワールド

米上院、政府閉鎖終了法案で賛成が過半数に 採決続く

ワールド

ブラジル、金利引き下げに余地 基礎的財政収支は均衡
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story