コラム

香川から沖縄、台湾まで――特別に盛り上がる選挙戦の共通点とは?

2023年12月02日(土)19時26分
覆面のドラゴン総統

今回のAIイラスト:20XX年、覆面のドラゴン総統が台湾を救う、の図…?(AI GENERATED ART BY NEWSWEEK JAPAN VIA STABLE DIFFUSION)

<日本各地から来年総統選が行われる台湾まで、芸人・プチ鹿島が選挙現場の「観戦」を続けるのは、ただ楽しいから。でもその裏で意外な発見することもある>

来年1月に行われる台湾総統選挙。私はこれを見に行くことに決めている。政治意識が高いからではなく、選挙が楽しそうだからだ。

経緯を説明すると、私は今年ドキュメンタリー映画『劇場版センキョナンデス』の監督としてデビューした。ラッパーのダースレイダーと共同での監督・主演だ。始まりは2021年10月の衆院選・香川1区での選挙現場を撮影し、2人のトークライブで報告したこと。これが好評だったので昨年の参院選は大阪へ行き、候補者たちに質問をどんどんぶつけた。それらの様子を映画にしたのだ。

気になる選挙現場へ行き、スポーツ観戦や食べ歩きのように楽しむことを「選挙漫遊」と呼ぶ。ライターの畠山理仁さんが提唱したものだ。例えば街頭演説。いろいろな候補のいろいろな考えを目の前で見る。候補者だけでなくスタッフや支持者も熱がある。人間の喜怒哀楽が全て確認できるのが選挙現場で、まるでフェス、つまり「祭り」だ。誰を「代理人」に選ぶかが、私たちの生活に跳ね返ることも実感できる。

選挙漫遊にハマると、畠山さんから「沖縄の選挙を見に行ったほうがいい。『選挙は祭り』を実践しているから」と言われた。だから昨年9月の県知事選に行った。歌や太鼓もあり、その熱気は確かに祭りだった。

選挙に無関心な人が多いと得するのは誰?

その中で忘れられない言葉があった。玉城デニー知事の演説を見に行ったら手製の応援グッズを手にした陽気なお姉さまたちがいた。話を聞いてみると「確かに楽しいですよ。でも楽しくやらないと心が折れてしまうから」と言うのだ。

沖縄県知事選ではSNS上で候補者や沖縄へのデマやヘイトスピーチが問題となった。選挙で米軍基地に関する民意が何回示されても本土には声が届かないとも感じて「心が折れそう、へこたれそう」と。「だからこそ楽しくやっています」と言われた。「楽しい」ことの重さを考えた。そういえば歌うことも心の叫びの表現の1つ。にぎやかさは切実さと表裏一体なのでは?と感じた。沖縄漫遊の模様は『シン・ちむどんどん』として2本目の監督作となった。

一方で、選挙に無関心な人はまだ多い。畠山さんは著書『コロナ時代の選挙漫遊記』(集英社)で、選挙に行く人たちは「選挙に行かないあなた」に対して厳しいことは言わないはずだと言う。なぜ?

プロフィール

プチ鹿島

1970年、長野県生まれ。新聞15紙を読み比べ、スポーツ、文化、政治と幅広いジャンルからニュースを読み解く時事芸人。『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』(双葉社)、『お笑い公文書2022 こんな日本に誰がした!』(文藝春秋)、『芸人式新聞の読み方」』(幻冬舎)等、著作多数。監督・主演映画に『劇場版センキョナンデス』等。 X(旧Twitter):@pkashima

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

東南アジア諸国、米高関税適用受け貿易交渉強化へ

ビジネス

カンタス航空、600万人情報流出でハッカーから接触

ワールド

豪首相、12日から訪中 中国はFTA見直しに言及

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 10
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story