コラム

「中国ウイルス」作戦を思いついたトランプ大統領は天才?!

2020年03月27日(金)15時00分

トランプは「中国ウイルス」と呼ぶことで感染拡大の責任が中国にあると印象付けようとしたようだ Joshua Roberts-REUTERS

<新型コロナウイルスの感染拡大は「中国のせい」と印象付けるトランプ大統領のやり方はある意味すごいけど、恐ろしい>

ドナルド・トランプ米大統領は天才だ。

学力テストの点数や学校の成績などの客観的な証拠に基づいて言っているわけではない。それらはトランプが顧問弁護士を通じ司法的な措置を武器に、出身高校や大学、SAT(大学進学適性試験)の運営会社などを脅して公開しないようにしている。点数がよすぎて、自慢したくないから控えているだけかもしれないけどね。謙虚だから、トランプは。

ハハハ! 冗談だ。トランプは謙虚さのひとかけらもない。何度も「大学を首席で卒業した」と大声で自慢しているし。

そういったトランプの自己評価を僕がうのみにしているわけでも、もちろんない。主席で卒業したというのもウソだし、「おれはとても安定した天才だ」と豪語しているが、その言い方自体がバカっぽい。

それでも、彼は一種の天才だと思う。浮気性のビリオネアなのに、キリスト教徒や低所得者のハートをつかむ天才。無数の不祥事を生き抜く天才。真実をフェイクニュースと言いながら、真顔で誤報を発する天才。などなど、限られた範囲では別格の能力を見せている。

最近だと、コロナウイルス対策に関するトランプの奇才ぶりに僕は感心している。いや、医療や保険制度の強化とか、緊急体制での行政運営といった話ではない。もちろん、世界のリーダーとしての活動でもない。それらにおいては最悪の仕事ぶりだ。

天才的なのは国内の世論操作だ。特に、「コロナウイルス」を「中国ウイルス」とかたくなに呼び続ける作戦。これは「相対性理論」や「万有引力」などと並ぶぐらいのひらめきと思われる。

でも、アメリカ国内で中国系アメリカ人が暴力を振るわれることも報じられているし、差別とされるような言い方をなんで使うのか? 会見で記者にそう聞かれたトランプは「ウイルスは中国から来たからだ」ときっぱり。シンプルな回答だが、これは発症地だけではなく、パンデミック(世界的流行)の原因が中国にあるという、責任所在の主張でもある。これがポイントだ。

確かに、初期段階での中国の対応は大問題だった。

政府がウイルスの存在を知ってから、動くまでが遅かった。最初は情報を隠したし、公開を始めてからも楽観的過ぎて、非現実的な見解を流していた。動いても対応自体が甘かった。結果、病床や医療品の確保も、医療従事者や機関の増強も、感染者の隔離や自治体のロックダウン(封鎖)も、世界との連携も、何もかも遅れた。

これらはどれも感染拡大の原因になり、どれも間違いなく政府の責任だ。そして、これらがトランプの許せないところ。

余談だが、日本語って紛らわしくて便利だね。

「これらがトランプの許せないところ」という一文は「トランプは中国のこれらが許せない」という解釈ができるし、もちろんそれは正しい。同時に「アメリカ国民はトランプのこれらが許せない」という風にも読めるし、これも正しい。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-〔アングル〕イラン戦争でインフレ再燃、トラン

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産

ワールド

イラン交渉団がパキスタン到着、レバノン停戦要求 米

ビジネス

米国株式市場=まちまち、中東交渉控え様子見 ハイテ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    アメリカは同盟国の「潜在的な敵」となった...イラン…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story