アウシュヴィッツ収容所の隣、塀のこちら側のファミリードラマ『関心領域』
そのファミリードラマの結末
グレイザーがそんな緻密な脚本で狙っているのは、たとえば、サバービアを舞台にしたジョン・チーヴァーの短編小説のような物語を語ることだ。郊外で夫婦が幸せに暮らしていたが、組織に帰属する夫は転勤が避けられず、家に執着する妻との関係が悪化し、夫婦はその先どうなるのか、といった物語だ。
本作の塀で隔てられたふたつの世界の対比が生み出す異様な空気や緊張が、ルドルフの転属によって舞台が変わっても失われず、むしろ増幅されていくのは、夫婦のファミリードラマと描かれないホロコーストが一貫して対比されつづけるからだ。
そのファミリードラマの結末は気になるところだが、グレイザーは、歴史を捻じ曲げることなく、ハッピーエンドにまとめてしまう。というのも、転属後のルドルフには、彼の後任としてアウシュヴィッツの所長となったリーベヘンシェルが降格されたときに、再び所長に就任した事実がある。本作ではそれが、家族が再びひとつになることを意味する。
グレイザーが、そんなファミリードラマと決して切り離せないものとして、われわれに想像させるホロコーストには、言葉にし難い恐怖がある。
『関心領域』
公開:5月24日より新宿ピカデリー、TOHO シネマズ シャンテほか全国公開
© Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

アマゾンに飛びます
2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
イタリア映画界で異彩を放つ女性監督の新作『墓泥棒と失われた女神』 2024.07.18
アウシュヴィッツ収容所の隣、塀のこちら側のファミリードラマ『関心領域』 2024.05.23
学校で起きた小さな事件が、社会システムの欠点を暴き出す『ありふれた教室』 2024.05.16
19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』 2024.04.25
アイスランドがデンマークの統治下に置かれていた時代の物語『ゴッドランド/GODLAND』 2024.03.28
-
「外資系」ITヘルプデスク「英語:中級以上」/ITコンサルティング
エイラシステム株式会社
- 東京都
- 年収400万円~650万円
- 正社員 / 契約社員
-
外資系顧客向けシステムエンジニア/システムインテグレータ・ソフトハウス
株式会社リファルケ
- 東京都
- 年収450万円~1,260万円
- 正社員
-
経験1年必須/ITコンサル/SE/Sierからコンサルタントへ/外資系プロジェクト有/残業少
株式会社ノースサンド
- 東京都
- 年収500万円~1,600万円
- 正社員
-
外資系案件担当/SNSマーケティングのコミュニケーションプランナー/東/英語力を活かせる仕事
トランス・コスモス株式会社
- 東京都
- 年収360万円~620万円
- 正社員