コラム

天安門事件から34年、中国化した香港に見る「パンとサーカス」の統治

2023年06月06日(火)19時15分

時代の流れとはいえ......

今後、天安門事件はどういう存在になっていくのか。中国国務院の傘下組織で一国二制度などの学術研究を行う「全国香港マカオ研究会」顧問の劉兆佳は、香港紙「明報」でこう述べている。

「天安門事件の集会には国家の政権に対する挑戦の意味合いがあり、中央政府が下した判断への挑戦にもなる」、「追悼集会が中国共産党への不満を呼び起こすものであれば、決して香港政府と中国政府が受け入れることはないだろう」

「天安門事件の追悼」がもはや解決が極めて困難な政治的イシューとなっていることは、中国政府もよく分かっているのだ。しかもそれは、中国共産党への批判と分かち難く結びついている。だから彼らは公園を封鎖して集会を阻止するのでなく、「パンとサーカス」で中国との同化を図る。

今年の6月4日夜には、日本や台湾のほか、米、英、豪、カナダ、ドイツ、チェコなど、いわゆる西側諸国の各地で追悼行事が予告された。香港で開催できなくなった一方、世界各地で引き継がれた。

来年以降も香港で大規模な追悼集会が行われる見込みはなく、今後は西側諸国による中国政府を牽制するためのイベントという外交カード的な面が一層強まっていくに違いない。時代の流れと言ってしまえばそれまでなのだが、天安門事件の軸足が遠い土地へと移り、香港に残っていた独自性が失われていくのは、何とも寂しいものである。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

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