最新記事
シリーズ日本再発見

「復活」ソニーが作ったロボットおもちゃ「toio」とは何か

2017年07月24日(月)12時02分
廣川淳哉

Photo:廣川淳哉

<好調が伝えられるソニーが発表し、瞬く間に初回限定400セットが完売した謎のデジタル玩具「toio(トイオ)」。出発点は「ソニーらしいものを作ろう」だった>

6月1日から6月4日まで開催された「東京おもちゃショー2017」開幕の数日前、ソニーがYouTubeに動画をアップした。そこに映し出されていたのは、しゃくとり虫のように動く物体。新しい玩具「toio(トイオ)」だ。

まずはともかく、下の動画を見てほしい。

これが、ソニーが今年12月1日に発売するtoio。チロルチョコほどの大きさのキューブ型ロボット(「toioコア キューブ」)を2つ使って遊ぶデジタル玩具だ。しかし、なぜソニーが今、玩具を発売するのだろうか。

日本メーカーの凋落がいわれて久しい。ソニーも例外ではなかった。ところが、最近は株価が堅調で、今年に入ってからは「ソニー復活」も盛んに報じられるようになっている。もはや「家電メーカー」とは呼べなくなったソニーだが、この小さなデジタル玩具も、そんな新生ソニーを象徴する製品の1つ......なのだろうか。

また、世間ではロボットやAI(人工知能)に対する関心が高まっており、小学校でも2020年度からプログラミング教育が必修となることが決まっているが、そんなニーズをくみ取って企画・開発された製品......なのだろうか。

toioとは、いったい何なのか? そこで、開発リーダーを訪ねてみると、出発点は意外にも「ソニーらしいものを作ろう」だったという。

toioは遊びのためのプラットフォーム

toioの主なターゲットは小中学生。ゲームでいうハード機のような役割を果たすtoioの基本セットには、toioコア キューブ2つのほかに、toioコア キューブの充電やカートリッジ(ゲームソフト)を挿入するためのコンソール、リング形状をしたコントローラー2つがセットになっている。

japan170724-1.jpg

奥の楕円形がコンソールで、両脇の丸いのがコントローラー。市場推定価格2万円前後(消費税別)

japan170724-2.jpg

モーターやセンサーなどを搭載した「toioコア キューブ」。上にレゴブロックを取り付けることができる Photo:廣川淳哉

「新しいおもちゃというよりも、おもちゃの楽しさを盛り上げるようなプラットフォームを作りました」と話すのは、toioプロジェクト開発リーダーであるソニーの田中章愛さん。

「子供向けという意味では、ソニーにはプログラミングを学べるMESHという商品がありますが、MESHはより教材としての意義が大きいもの。toioにも学びの要素はありますが、あくまでも遊びのためのプラットフォーム。遊びも学びのうちというスタンスです」

【参考記事】プロの技術者も利用する電子DIYキット

japan170724-3.jpg

toioの開発リーダー、ソニーの田中章愛さん Photo:廣川淳哉

toioの主要開発メンバーは、リーダーの田中さんを含め3人いる。コンセプト開発を行ったのは、グループ企業であるソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)に所属し、インタラクションの研究を行っているアンドレ・アレクシーさん。

ソニーで長らくロボット研究を続けてきた田中さんとCSLのアレクシーさんが5年ほど前に出会い、「ソニーらしいものを作ろう」と雑談を始めたのが出発点となった。

「私がやっていたロボットのハードウエア技術と、彼がやっていたソフトウエアやエンターテインメント、ゲーム研究など、ソニーの資産や技術を使って、何かできないかと話したのがきっかけ。要素技術研究をやりながらも、商品を作りたいという思いがありました。ロボットを使った新しいエンターテインメントを作ろうと決まったのが、5年前くらい。『こういうものがあったらおもしろい』というアイデアを"放課後活動"でカタチにしました」と、田中さんは語る。

【参考記事】映画「カーズ」をリアルに再現するスフィロ社の LIGHTNING McQUEEN

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え

ビジネス

焦点:米中貿易休戦、海外投資家の中国投資を促す効果
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 8
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中