コラム

中国「純国産車」の侮れない実力

2011年02月04日(金)10時01分

 昨年の新車販売台数が1800万台を超え、2年連続で世界一の自動車市場となった中国。その成長は今後も続きそうだ。

 そんな中、近年では新興企業が存在感を増しつつある。吉利や奇瑞、BYDといった新興の国産ブランドは圧倒的な安さを武器にしながら、着実な品質の向上も見せ始めている。

 こうしたメーカーのターゲットは金持ちではない。中国の金持ちが車選びの際に何よりも重視するのはブランドだからだ。中国のジャーナリスト王建鋼によれば「金持ちは純粋な輸入車にこだわり、その区別もはっきりしている。純輸入車には漢字のブランド名が書かれていない」。

 モータリゼーションの時を迎えた中国で、彼らにシェアを奪われたのは外資と国内メーカーの合弁企業だ。日系企業などとの合弁の車は一応「国産」とされる。だが新興の国内企業は品質向上で、「偽りの国産のシェアを奪った」と王は言う。

 もちろん新興メーカーの技術が本当に日本や欧米のメーカーの水準に追いつくには、まだ長い時間が必要だろう。自動車メーカーは簡単にブランド力が変わるようなものではなく、時間軸の長い産業だ。モデルチェンジの周期は家電などに比べてはるかに長いし、生産ラインの変更も簡単にできるものではない。

 だがその一方、王は新興メーカーの着実な変化を現地の取材で感じたという。「以前は広報担当者の車に対する理解などは日本企業に遠く及ばず、生産ラインも手作りに毛が生えた程度だった」。だが最近は労働者の質も上がり、生産ラインも日本と比べて見劣りするものではなくなってきたという。

 王がその背景に挙げるのは、日本や欧米から部品や設計など車の専門知識を持って帰国した技術者たちの存在だ。地方自治体などの、彼らに対する優遇措置も後押ししているようだ。そして何より、彼らには成長を続ける市場がある。「市場があれば、技術がついてくる」


――編集部・藤田岳人

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ協議、次の展開不透明とトランプ氏 米ロ会

ワールド

イスラエルに人質1人の遺体返還、残り1人か ラファ

ビジネス

米の同盟国支援縮小、ドルの地位を脅かす可能性=マン

ワールド

トランプ政権、燃費規制の大幅緩和提案 ガソリン車支
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story