コラム

「主役は中国」―APEC取材の舞台裏

2010年11月15日(月)03時00分

ディナー.jpg

中国の胡錦濤国家主席(左)を出迎える菅直人首相(13日午後、横浜市西区のパシフィコ横浜=代表撮影)

 言うまでもないが、14日に閉幕したAPECの主役は中国。準主役がロシア、そして友情出演はアメリカ――終わってみての印象だけで判断するなら、これが妥当な配役だろう。

 もちろんこれは、あくまで日本から見た話。だが主にアジア太平洋の経済協力を話し合うAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、日本メディアが何より注視していたのは日中首脳会談が実現するのかどうか。そして国後島を訪問したメドベージェフ露大統領との日露首脳会談に、菅首相がどこまで「強腰」で挑めるのかどうかだった。

 12日時点の政府発表では、13日は10:30~11:30に日米首脳会談、17:40~18:20に日露首脳会談という予定。だが、日中首脳会談については13日に日米首脳会談が行われた後も、政府の答えは「調整中」のまま。国際メディアセンター(IMC)内の日本メディアの共同スペースでは、記者団が「あるのかないのか」とやきもきしていた。

 事態が動いたのは13日の17:10ごろ。「開催される」との発表があり、その直後の17:26~17:48の約22分間、とうとう日中首脳会談が実現した。その後の政府発表によると、会談が確定したのは16:50ごろと、開始のわずか30分前だったという。17:40~の日露首脳会談の予定を遅らせながら、やっとの思いで実現できたというわけだ。

 このドタバタぶりを伝える1枚が、こちら(13日17:41撮影)。

ホワイトボード前.JPG

 IMC内の共同スペースで日本メディアが何にむらがっているのかというと、会談予定などが分刻みで書き出されたホワイトボード。そこに貼り付けられた、会談に同席した日本メディア代表による「代表取材メモ」を読み取ろうと押し合っているのだ。人だかりの後ろからは、「誰か読み上げて!」という怒鳴り声が飛ぶ。一刻も早く報道しようという、情報戦の最前線だ。

 だが、日中首脳会談にメディアが入れたのは最初だけ。代表取材メモに書かれていたのは

■菅直人首相 今回は、APECに出席され、こころから歓迎いたします。
■胡錦濤国家主席 APECにお招き頂きありがとうございます。今回の会議にあたって周到な準備をされました。成功できると信じています。

という冒頭の挨拶のみだ。ホワイトボードを見ると、「日中首脳会談」が書き加えられ、日露首脳会談の開始時間が修正されたことがわかる。

ホワイトボード.JPG

 日中・日露首脳会談が立て続けに行われたため、19:30から行われた政府による日本メディア向けブリーフィングには大勢の記者が詰め掛けた。クローズドで行われた会談で「尖閣」や「北方領土」をどう話し合ったのかを、2つの首脳会談に同席した福山官房副長官から聞き出すためだ。ブリーフィングでスピーカーの前に置かれた大量のICレコーダーから、記者団の気合いが読み取れるだろうか。

テープレコーダー.JPG

 このブリーフィングでの政府説明は報道のとおりで、日中会談で話された尖閣問題の具体的なやりとりについては記者団がいくら突っ込もうとも「外交上のことなので控えたい」という答え。日露会談については、国後訪問に対して「菅首相が抗議した」ということだった。

 さてこうした動きの中ですっかり影をひそめてしまったのが、かつての「ロックスター大統領」、オバマ。12日夜、大統領専用機エアフォース・ワンが羽田に降り立ったときの威圧感や、日本滞在中のセキュリティーの厳しさは「さすがアメリカ」という感じ。だが13日午前に行われたCEOサミットでの演説では、(会場の盛り上がりだけを見れば)その1時間後に行われた胡錦濤スピーチの「前座」のようにさえ見えた。2人の演説内容はともかく、国内外から詰め掛けた聴衆たちは胡錦濤スピーチの前後にオバマのときよりも大きな拍手喝采を送っていた(演説自体も胡錦濤の方が長かった)。財界人を中心とした聴衆のなかには、中国人も多くいたと思われるが。

 普天間問題で日米がギクシャクしたところに中露が尖閣、国後を持ち出してきたことを考えると、日米首脳会談が滞りなく行われ、日中・日露に比べて日米関係は「まだまだ安泰」のように見えるのはなんとも皮肉だ。オバマも10日間に及ぶアジア歴訪の最終目的地が日本だったことで、相当疲れていたに違いない。最後は鎌倉で抹茶アイス――そんななごやかムードで締めくくれたのも、主役を中露に譲ったおかげかもしれない。

――編集部・小暮聡子

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国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

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