コラム

子育ての一番心強い味方って?

2010年11月11日(木)18時01分

「実はうちの子、いまだに私が夕飯のしたくする最中に抱っこ抱っこって毎日泣いて......」

 1人のお母さんが極秘事項を打ち明けるみたいにおずおずと話し出すと、「うちも!」「うちの子なんて以前より激しくなった!」と、5~6人が立て続けに声をあげました。先日、1歳9カ月の息子が通う保育園で行われた保護者会でのことです。他にも誰かが「いまだに夜泣きが多い」「イヤイヤの抵抗がすごい」「自分でごはんを食べてくれず大変」と悩みを告白するごとに、何人ものお母さんが口をそろえて言うのが、「うちの子だけかと思っていた!」

 子育て中は、こんなプチトラブルがつきもの。乗り切るために必要なものは、忍耐? 愛情? 周囲のサポート? どれも必要だけれど、何より心強いのは「乳幼児の発達過程を正しく知る」ことだと、アメリカの子育てプログラム「健康な家族アメリカ(HFA)」の責任者シドニー・ウェセルは言います。発達の各段階で何が起こるのか、それが子供の行動にどう現れるのかをあらかじめ知っておけば、不必要に子供にいら立ったり自分を責めたりせずにすむ。今はこの発達段階にいるから、こんな行動は当然のもの――そう思って辛抱強くなれるというのです。

 確かにその通り。たとえば、誕生後まもない赤ちゃんはとにかくよく泣きます。これは、「生まれたての新しい環境や情報がストレスになっており、そのストレスに対処するため」。泣くことを繰り返し、次第に赤ちゃんは新たな世界のストレスに対応することを覚えていくそうです。私の息子も新生児期は常に泣く→抱っこすると泣き止む→眠ったところでそっと布団におろすと途端に泣く、というのを一晩に何十回と繰り返していました。あの時期にこの知識があったら、もう少し気分が楽になったかもしれません。

 他にもたとえば、両親がテレビを見ているときに1歳児がテレビをつけたり消したりしたとします。大半の親は、子供がわざといたずらして親を怒らせようとしていると受け止めるでしょう。でも、実際には1歳児には「他人の感情を察する能力はまだない」。むしろスイッチを操作した結果何が起こるのか、と知的好奇心を発揮しているのだと好意的に解釈すべきだということです。対処法としては、スイッチをつけたり消したりできる玩具を与えたり、あるいは満足するまでやらせておけば1~2分で飽きるはず、とのこと。

 テレビであまりに頻繁に目にする「○○式子育て」とか多くの親が通わせる「××メソッド幼児教室」などの提唱するテクニックを鵜呑みにしてわが子に当てはめるよりも、科学に基づく正しい発達の知識をもって、わが子ならではの子育て法を見つけるほうがずっと簡単で効果的。脳と個性の育て方、最新研究に基づく発達のメカニズム、育児トラブルの基礎知識&解決法など、実践で役立つ情報満載のニューズウィーク日本版SPECIAL EDITION『0歳からの教育 最新2011年版』、本日発売です。ぜひご覧ください。

――編集部・高木由美子

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ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

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