コラム

サルコジ惨敗で浮上した懐かしのあの人

2010年03月23日(火)11時00分

 2012年のフランス大統領選で再選を狙うニコラ・サルコジには痛すぎる結果だ。3月14、21の両日に行われた地方議会選挙で、サルコジの与党・民主運動連合(UMP)は惨敗し、大きく議席を減らした。大統領選前に行われる最後の大型選挙とあって、サルコジ政権へのダメージは必至だ。

 選挙戦では道路整備や地方の雇用などローカルな問題が争点になっていたにも関わらず、ふたを開けてみればサルコジへの信任投票に終わった、というのが大方の見方。選挙前には「あくまで地方選挙だから国政には関係なし」という態度だったサルコジも、さすがにこの結果には慌てて、閣僚の入れ替えなどで刷新を考えているという。

 そんな選挙で、久しぶりに表舞台に姿を現した「女優」がいる。07年の大統領選で社会党党首としてサルコジと決選投票を戦った、懐かしのセゴレーヌ・ロワイヤルだ。04年からポワトゥー・シャラント地方圏知事を務めているロワイヤルは、今回の選挙でこの地方を圧勝に導き、55の議席のうち7割を獲得した。

 07年当時のロワイヤルは、「聞き上手な新しいタイプの政治家」「スタイリッシュで魅力的な女性リーダー」ともてはやされ、写真付きの記事を目にしない日はなかったくらいだ(当時ですら、ちょっと持ち上げすぎなんじゃないかと思っていたけれど)。いつでもフェミニンなスーツに身を包んで笑顔を向けていたロワイヤルは、大統領選でサルコジに敗北した後はほとんどお目見えしなくなった。

 長年連れ添った同じ社会党のフランソワ・オランドとの関係に終止符を打ったとか、別れた後にオランドへの恨み節を口にしているとか、社会党分裂の元凶になっているとか、08年の社会党党首選でマルティーヌ・オブリに敗れたとか、ロワイヤルに関して聞こえてくるのはなんだか負け組な話題ばかりだった。09年にボーイフレンドとのラブラブ写真がパリ・マッチ誌にすっぱ抜かれて久々に華やかな注目を浴びるのかと思いきや、プライバシーを侵害されたと同誌を訴える始末だ。

 英デイリー・テレグラフ紙の選挙前の報道によれば、ロワイヤルは地方選の圧勝を足がかりにして12年の大統領選での復活を狙っている可能性があるという。14日の第1回投票後、選挙結果はサルコジへの「重い懲罰票だ」と高揚して発言するロワイヤルの発言がメディアをにぎわせている。

 すっかり昔の人になっていたロワイヤルが、オブリ党首やIMF専務理事のドミニク・ストロスカーンなど社会党の大物ライバルを破って再び大統領選に望むのか? かつて彼女をヒロイン扱いしていたメディアは、今度はロワイヤルをどう報じるのだろう。

――編集部・高木由美子

このブログの他の記事も読む


プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「米国の和平案推し進める用意」、 欧

ビジネス

米CB消費者信頼感、11月は88.7に低下 雇用や

ワールド

ウクライナ首都に無人機・ミサイル攻撃、7人死亡 エ

ビジネス

米ベスト・バイ、通期予想を上方修正 年末商戦堅調で
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story