コラム

日米関税協議の隠れテーマ「対中取引の制限」──安易に譲歩すれば日本が喰い物にされかねない理由

2025年04月28日(月)20時20分

アメリカは損失補償をしない

最後に、中国とほぼ断絶して日本が大きな損失を被っても、アメリカのバックアップは期待できない。これが冷戦時代との大きな違いだ。

アメリカは冷戦初期、いわゆる封じ込め政策に基づいて日欧に共産主義陣営との取引制限を求めた。


しかし、ヨーロッパは19世紀のロシア帝国の時代から、日本は戦前から、それぞれソ連や中国大陸と取引していた。

日欧はその経済的利益を諦めざるを得なかったわけだが、当時のアメリカは文字通り太っ腹な超大国として日欧製品に市場を開放し、同盟国の納得を取り付けた(少なくとも1970年代までは)。

冷戦時代の西側同盟の結束は、単に自由や民主主義といった価値観によってのみ支えられたわけではない。

ところが現代では「アメリカ製品を買え」「アメリカに投資しろ」という圧力だけが強まっている。この状況で対中取引を制限しても、アメリカのカモになりかねない。

アメリカ史上屈指の外交官ヘンリー・キッシンジャーは「アメリカに永遠の友も永遠の敵もない。あるのは利益だけだ」と述べたと伝えられる(発言元には諸説ある)。これこそ外交の真髄だろうが、同じことはどの国にも当てはまる。

念のために断っておけば、中国と手を組めといっているのではない。最終的にはアメリカにつかざるを得ないとしても、対中取引で簡単に妥協しては、アメリカに完全に取り込まれてしまい、日本の利益が損なわれる懸念が大きい。

対中取引を守ることは中国のためではなく、日本のためなのだ。

※当記事はYahoo!ニュース エキスパートからの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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