コラム

日米関税協議の隠れテーマ「対中取引の制限」──安易に譲歩すれば日本が喰い物にされかねない理由

2025年04月28日(月)20時20分

米中板ばさみの最先端へ

つまり各国は「対中取引を減らせ」というアメリカの圧力と、「アメリカに屈するな」という中国の圧力に挟まれている。

日本は主要国の中でも早いタイミングで関税協議をスタートさせた。その行方は、後に続くアメリカと各国の協議の流れをある程度左右するとみられる。


とすると、日本は米中二者択一の最先端に近いわけだが、対中取引の制限を求められた場合、全面的な受け入れは難しい。リスクと不利益が大きすぎるからだ。

日本に拠点を構える投資企業マネックス・グループのイェスパー・コール氏は英BBCで「間違いなく、日本は米中どちらかを選ぶのを望まない」と論評した。日本に対する客観的な視点からは、こうした見解が珍しくない。

日本にとってアメリカは最大の投資対象で、中国が最大の貿易相手国であるように、米中に経済的な意味で互換性がないことはもちろんだが、それ以外にも大きく3つの理由があげられる。

アメリカ一択のアリ地獄

第1に、簡単に対中取引を諦めれば、日本は逆にアメリカの圧力にさらされやすくなる。

米中対立がかつてなくエスカレートするなかでのアメリカ一択は、ほぼ確実に日中対立もかつてなくエスカレートさせる。そうなるほど日本は対米依存を深めざるを得ない。

それはアリ地獄のようなものだ。

これまで以上にアメリカの引力が強まれば、今後の中長期的な関係で日本の交渉力はさらに低下しかねない。

仮に「対中取引で譲歩すればコメや為替は大目に見る」と言われて承知しても、後になって翻されたらそれまでだ(アメリカには口約束を「公式の合意ではない」と反故にした"前科"がある)。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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