コラム

FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

2024年06月14日(金)12時10分

パウエル議長は2%インフレへの回帰が早晩実現する、との認識

また、パウエル議長は記者会見において、9月の利下げの是非について言及は避けたが、労働市場の需給バランスが改善しており、5月のインフレコア低下を「良い数字」と評価した。今回示されたインフレ見通しについて、「保守的な想定を置いてインフレ見通しが達成できる」とも言及した。2%インフレへの回帰が早晩実現する、との認識をパウエル議長自身は抱いているとみられる。

 
 

更に、年内1回利下げ、2回利下げの意見の違いが小さい点にも議長は言及したが、FOMCメンバーの見解は、今後のインフレコアの見通しの違いがもたらしているとみられる。この予想の違いはあるが、現在5.5%の政策金利は高過ぎるため、年率2%に近いインフレが23年後半のように数か月続けば利下げが必要、との認識は多くのメンバーで共有されているということだ。

24年9月からFRBも引締めを緩めて金融緩和に転じる

要するに、FRB利下げに転じるかどうかは米国のインフレ次第である。単月のインフレ指標の予想は難しいが、今後はインフレの落ち着きが3カ月程度続く、と筆者は予想している。このため、9月会合での利下げが行われると引き続き見込んでいる。

FRBは22年から金融引締めを継続してきた。ECB(欧州中央銀行)やBOC(カナダ中銀)といった先進国中央銀行と同様に、24年9月からFRBも引締めを緩めて金融緩和に転じるとみられる。このため、為替市場における、ドル高円安のトレンドが変わるだろう。歴史的な円安という日本経済にとって大きな追い風がやむ時期は着実に近づいている、と認識する必要がある。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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