韓国スパイ映画『工作』のような国家の裏取引は日本にもある?
本作の時代背景は1992年。韓国軍情報部隊の将校パク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は、国家安全企画部に北朝鮮への工作員としてスカウトされ、「黒金星(ブラック・ヴィーナス)」というコードネームを与えられる。任務は北朝鮮の核開発の実態調査だ。実業家として北朝鮮の権力層に食い込んだパクは、4年後には最高権力者である金正日(キム・ジョンイル)との面談まで実現させる(このシーンもすごい)。
しかしこの頃、韓国では大統領選挙が行われようとしていた。政権交代によって組織の解体再編を恐れた国家安全企画部は与党の政治家たちと裏で手を結び、大統領選を与党有利に進めるべく、北緯38度線の停戦ライン周辺で武力攻撃を行うよう北朝鮮と裏取引を行っていた。これを知ったパクは激しく葛藤する。
これ以上はネタバレになる。でもとにかく圧巻だ。登場人物はほとんどが仮名だが、国家安全企画部などの組織名は全て実在していた名称だし、大統領選における与党・ハンナラ党候補の李会昌(イ・フェチャン)や野党候補で勝利した金大中(キム・デジュン)などは当然のように実名になっている。
史実でしかも公人や国家組織を描くのだから、実名にすることは当然だとの気概を感じる。