コラム

日常を「体験」する映画『わたし達はおとな』に釘付けになる理由

2022年05月12日(木)16時20分

それにしても分からない。見ながら考える。脚本はあえて詳細を書き込まずに、現場で俳優たちと試行錯誤しながら作ったのだろうか。つまりドラマとドキュメンタリーの融合。あるいは状況だけを俳優に与えて、即興で演じさせる手法もある。要するにエチュード(即興劇)の延長。

そんなことを思いながらネットで検索していたら、加藤のこんなコメントを見つけた。「私達の生活を非日常で俯瞰して体験する、そんなことがテーマの映画です。一口にラブストーリーと言われてしまえばそれまでなのですが、繰り返し言わせていただきますとこれは生活の映画なのです。ドキュメンタリーじゃないですよ。アドリブもないですよ。映画だから」

うーむ。してやられた。悔しい。

magmori220512_2.jpg『わたし達はおとな』(6月10日公開)
監督/加藤拓也
出演/木竜麻生、藤原季節、菅野莉央、清水くるみ

<本誌2022年5月17日号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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